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こんな映画を観てきた[50] キャバレー

   キャバレー
[CABARET]
(1971/米 監督…ボブ・フォッシー)

 「人生はキャバレー」(ライフ・イズ・キャバレー)、映画の中の代表的な歌の歌詞だが、当時に限らず、今でもよく聴くほどのスタンダードとなった。
 「恋人を作るより友だちを作る方がむずかしいわ」とは、主人公(マイケル・ヨーク)をライザ・ミネリが誘惑し、拒絶され、彼女は友だちでいましょうとこの台詞を吐いた(和田誠著『お楽しみはこれからだPART3』より)。拒絶された理由は後にわかる…
 大戦前夜の頽廃ムード漂う中、そこにこのライザ・ミネルが放つ強烈な光(どちらかというと暗黒の光…)、後に内容よりも歌の方の評価が高かったと言われた(とても面白かったと記憶しているが)?『ミスター・アーサー』への出演があった彼女だが、やはり『キャバレー』での演技が鮮烈かつ際立っていたことに違いはないだろう。とにかく、母親(ジュディ・ガーランド)とは、真反対というか、見た目の印象だけだが、全く対照的で、ただただ驚かされるばかりだ。
 さて、監督のボブ・フォッシー、後に『オール・ザット・ジャズ』という自伝的作品を世に出した…のだが、どうしたわけか観ていない。よほど主演のロイ・シェイダーが〝お気に召さなかったか〟、タイトルのイメージとしてもぜひ観ておきたいと、当時はきっと思うはずであろうと考えるところであるが、何故か観ていない。少し調べてみると、この配役にはいろいろと悶着がついたらしく、作品の評価は高かったようだが、とにかく「こんな映画を観てきた」リストには入っていない

こんな歌を聴いてきた    翳りゆく部屋

   翳りゆく部屋

     作詞・作曲:荒井由実

  窓辺に置いた椅子にもたれ
  あなたは夕陽見てた
  なげやりな別れの気配を
  横顔に漂わせ

  二人の言葉はあてもなく
  過ぎた日々をさまよう
  ふりむけばドアの隙間から
  宵闇が しのび込む

   どんな運命が愛を遠ざけたの
   輝きはもどらない
   わたしが今死んでも

  ランプを灯せば街は沈み
  窓には部屋が映る
  冷たい壁に耳をあてて
  靴音を追いかけた

 正直言って、好きなタイプの歌い手(ミュージシャンと言うべきか…)ではない。ただし、この曲だけは別格である!・・・と思っている。壮大なる暗さ、宇宙空間につながる雰囲気に満ち満ちている。これを聴いた後に、映画『2001年宇宙の旅』のラスト(だけ)を観れば、今日という日は完璧である。学生時代だったか(卒業していたかもしれない…)、傾きかけたアパートの四畳半で、ヘッドフォン越しに聴いていた、時間は真夜中、想えば懐かしいというよりも、ただただおかしいばかりだ。

《訃報》 アラン・ドロンさん死去

[訃報]俳優 アラン・ドロンさん死去 88歳

「太陽がいっぱい」で主演
 2024年8月18日 15時45分  NHKオンライン

 映画「太陽がいっぱい」などに主演し、世界的な二枚目俳優として日本でも多くの人々を魅了した、フランスの俳優、アラン・ドロンさんが死去しました。88歳でした。

 フランスのAFP通信は、家族の話としてドロンさんは、フランス国内の自宅で家族に見守られながら息を引き取ったと伝えています。

          ◇

 〝世界的な二枚目俳優〟と記事にはあるが、果たして・・・
 彼と、アメリカからはロバート・レッドフォード、イタリアからはジュリアーノ・ジェンマ、世界三大二枚目として括ればこういうことになるか…
 思えば、テレビ上映となると、三人とも吹き替えは決まって(必ずではないが…)野沢那智さんの役割だった。実際には、アラン・ドロンにしても、おそらく他の二人にしてももっと低音であったようだが、その甘ったるい声質がその人気をさらに高めたことに違いはない…と思う。
 ドロンといえば『太陽がいっぱい』であることに異論はないが、個人的には『太陽はひとりぼっち』も『サムライ』も『ル・ジタン』なんていうのも面白かったが、何といっても『ボルサリーノ』、できれば『…2』を挙げたい。前者は製作側が彼に演じさせたかった作品、それに対して後者は彼がやりたかったもの…のような気がする、作品的評価はどうでも良く、とにかく観ていて楽しかった。チャールズ・ブロンソンを〝復活〟させた『さらば友よ』、ジャン・ギャバンを引き摺りだした?『シシリアン』など、決して独りよがりではない映画作り(実際にはもっと生臭いことなのだろうけれど…)を手掛けたことに関しては感心頻りである。誰も得しなかったのはカトリーヌ・ドヌーブ(『リスボン特急』)とジャン・ルイ・トランティニアン(『フリックストーリー』ぐらいか、映画自体は面白かったが、大スターを更に大きな存在にすることはなかった…ような気がする。もう半世紀も昔のことになるか、切れ目なく彼の映画を観ていた時期があって、特に大ファンというわけではなかったが…いや、これは立派にファンだったのだろうと今思っている。

こんな歌を聴いてきた    水中花

   水中花

      作詞・阿久 悠
      作曲・歌:井上 忠夫

  線香花火チリチリと
  松葉模様描いてる
  金魚鉢ではポトリ紙の花咲く
  水の中で開く花
  外に出せばただの紙
  そうよ私はここで生きているだけ

     あなたには二度と逢えないわ
     お互いに不幸になるだけよ
     さよなら さよなら お酒でも飲みます

  針の音がシャーシャーと
  歌の隙間埋めてる
  古いレコードかけて酒を飲むのよ
  辞書を開き知らぬ文字
  さがしながら書く手紙
  頬に流れる涙吹きもしないで

     あなたには二度と逢えないわ
     お互いに不幸になるだけよ
     さよなら さよなら 夜明けでも待ちます

 どこでどうひっかかったか、まさか松坂慶子の『愛の水中花』(こちらは五木寛之作詞)と間違えたわけでもあるまいが、調べるとその3年ほど前に発売されたものであったようで、とにかくLPを買い求めて、これもまた毎夜のごとく繰り返し聴いていたことは覚えている。『ブルーシャトー』も悪くはないが、この井上忠夫という人のベースは、あくまでも〝和風で〟、ここらあたりにあったのだと思っている、そのくらい沁みるのである。

こんな映画を観てきた[49] 風と共に去りぬ

   風と共に去りぬ
[GONE WITH THE WIND]
(1937/米 監督…ヴィクター・フレミング)

 「明日考えるわ」(和田誠著『お楽しみはこれからだPART2』より
スカーレット・オハラの有名な台詞である。和田誠さんによると、原作にも使われている主要な台詞であり、映画というより文学の名台詞というべきなのだそうだ。「Tomorrow iIs Another Day」明日は明日の風が吹く…は突き詰めるとこういうことになる。主演に大(?)抜擢されたヴィヴィアン・リーは、この後、『哀愁』、『欲望という名の電車』など、映画の歴史に残る名作に出ることになるが、小さい身体にこの大物感、見出した人、要は製作者の勝利ということだろう。ジーン・アーサーやスーザン・ヘイワードなど、名だたる大女優がこの役を目指したらしいが、なにか特別なコネクションがあったか(その気配もあったとか、なかったとか、その噂はあったと何かの資料で読んだことがある)、無名の小柄な女優がこの大役を射止めたという。とにかくこの時代に、こんなテーマのこんな大作、アメリカという国の〝迫力〟を思い知らされた。

こんな歌を聴いてきた    どうぞこのまま

   どうぞこのまま

     作詞・作曲・歌 丸山圭子

  この確かな 時間だけが
  今の二人に 与えられた
  唯一の 証しなのです

  ふれあうことの喜びを
  あなたのぬくもりに感じて
  そうして 生きているのです

  くもりガラスを 伝わる
  雨のしずくのように
  ただひとすじに ただひとすじに
  ただひたむきに

  それは ばかげたあこがれか
  気まぐれな恋だとしても
  雨は きっと 降り続く

  くもりガラスを たたく
  雨の音かぞえながら
  どうぞこのまま どうぞこのまま
  どうぞやまないで

  さよならは 涙とうらはら
  冷めたコーヒーのようなもの
  だから いつまでも このまま

  どうぞこのまま どうぞこのまま
  どうぞやまないで
  どうぞこのまま どうぞこのまま
  どうぞやまないで

 遠い昔、LPを買って四畳半の部屋で、相応の卓上オーディオでよく聴いたものだ。たしかこの丸山圭子という歌手は同い年ではなかったか…隙間だらけの、若干傾いていて窓もちゃんと閉まらない部屋では「くもりガラスを伝わる雨のしずくのように」などと、とてもロマンチックな雰囲気ではなかったけれど、それはそれでおかしくもあり、決して惨めなものではなかったように思える、懐かしいだけかもしれないが…
 ボサノバ調の歌謡曲とでもいうべきか、まあそんなことはどうでもよろしい、入手した当座は、とにかくほぼ毎日聴いていた。最近になって、ネットで聴いてみて(引越しを機に、後生大事に置いていた壊れたステレオも、併せてレコードも捨ててしまった)、相変わらずいい歌だと思えて、試しに他の彼女の曲も続けて聴いてみたけれど、個人的に沁みる歌はこれだけだったかな?

こんな映画を観てきた[48] お熱いのがお好き

     お熱いのがお好き
       [SOME LIKE IT HOT](1959/米 監督…ビリィ・ワイルダー)

 女装してギャングから逃げているジャック・レモンに金持ちのお爺さんが惚れてしまって、あげく求婚するに至るが、いろいろ言いつらねて逃げようとするも、全てを許そうとするこの老人に対してついにかつらを取って
   「俺は男だ」
 それでもこの老人挫けず、こう続ける
   「完全な人間はいない」
 恐れ入りました…モーターボート上でのラストシーンだった。
    (和田誠著『お楽しみはこれからだ』より)

 ビリィ・ワイルダーにジャック・レモンとくれば、もうなんでも面白いわけだが、『アパートの鍵貸します』と本作はその双璧といえるのだろう。もっとも個人的には、マリリン・モンローとトニー・カーチスが束になってかかってきても?シャーリー・マクレーンが共演とあれば、作品として前者には到底かなわないが…
 その昔、市内観光バス(「グレイライン」と言ったか?)でハリウッドを訪れた折(過去にトラブルがあったらしく、住宅地はノンストップだったことを覚えている)、「こちらが、あのビリィ・ワイルダー監督のお宅です」との案内があったような…こちらの思い込みによる聞き違えかもしれないが、そう聞こえた。

こんな唄に出くわした[20]    酔いしれて

     酔いしれて

    作詞:音羽 たかし
    作曲:高寄 潤
     歌:岸 洋子

  恋に苦しみ 恋に泣いて
  恋に狂った 私なのに
  恋のせつなさ 恋の甘さが
  今夜も私を 酔わせるの
  忘れられるものなら
  こんなに 飲みはしない
  愛した私が 悪い
  熱い口づけに 酔いしれながら
  何時か眠った すぎし夜よ

  恋の未練に 心乱れて
  眠る夜毎の 夢にさえも
  あなたの優しい 甘い言葉が
  今夜も私を 酔わせるの
  何時か逢えるものなら
  こんなに 飲みはしない
  愛した私が 悪い
  熱い口づけに 酔いしれながら
  何時か眠った すぎし夜よ

 岸洋子の唄にしてはイメージが広がらないというむきもあるかもしれない、彼女ならもっと〝愛〟を高らかに歌い上げてしかるべし…との声があるかもしれない。ちあきなおみの歌唱を見つけて、こちらも聴いてみた。全く違った雰囲気世界観で、どちらがどうということでは毛頭ないが、これはシャンソンではなく、一方は思い切り歌謡曲ということなのか、いずれせよどちらもそれぞれ違った道を通って沁みてきた。

こんな映画を観てきた[47] エマニエル夫人

   エマニエル夫人
[EMMANUELLE]
(1974/仏 監督…ジュスト・ジャカン)

 その昔まだ学生の頃、友人と二人で渋谷の映画館で女性客優勢の中、通路に座り込んで観たことを憶えている、“ポルノ映画”というレッテルを外したところで、女性客がどっと映画館に訪れた。後に旅行をした折、ミュンヘンの映画館で改めてドイツ語吹き替えのものを観た(やけにせりふ回しの歯切れが良かった、なにしろドイツ語だもの)が、はねてあかりが灯ったその時の情景、観客の殆どがおじいさんであったことをこれは強烈に記憶している。ストーリーやそのテーマに関する探究?などここで展開するつもりは毛頭ないが、シルビア・クリステルの可憐さと妖艶さが際立っていたことだけは否定しない。
 得体のしれない老人マリオ(アラン・キュニー)がエマニエルに教えを垂れる。「エロチシズムとは感覚ではなく精神だ」(『お楽しみはこれからだPART4』=和田誠著)何だかよくわからないが、とにかくご託宣なのであろう。アジア蔑視の匂いプンプンで、共感も納得もするところはないが、映像だけはやけに綺麗だったことが印象に残る。

こんな唄に出くわした[19]    暗い港のブルース

   暗い港のブルース

 かねてよりよく閲覧させてもらっているサイトにて、こんな曲に突如出くわした!いろいろな人が唄っているようだが、聴き比べてザ・キングトーンズの持ち歌といえるのだろう、あのやけに甲高い声がよく沁みる…

   作詞:なかにし礼
   作曲:早川博二
   唄: ザ・キング・トーンズ

  いとしいひと あなたはいま
  名前さえ告げずに 海にかえるの
  白い霧に 目かくしされ
  遠い船の汽笛 ぼくは聴いてる
  かりそめの 恋をさけんだけれど
  あふれくる 涙 涙 涙
  切れたテープ 足にからめ
  あなたの影を追う 暗い港

  さよならは 死ねというも同じ
  枯れはてた 涙 涙 涙
  不幸色した ランプゆれて
  あなたを今日も待つ 暗い港

 サイトによると、原曲は洋楽のインストゥメンタルかと思ったら、日本で生まれたもので、作曲はトランペット奏者であったという、いかにもといった趣である。演歌などではもちろんなくて、ムード歌謡というのもどうかと、とにかく歌謡曲といってしまっていいものかと思ってしまう(歌謡曲結構なのだが…)。確かに洋楽ではない、かといって…とにかくよくわからないが珍しいものに行き当たった。