-ブルースブラザーズ【1981/米】-
看守に付き添われて一人の男が刑務所内の通路を無言で歩く、刑期を了えてめでたく出所である。このカットに十分時間をかける。観る側としては、始めからこの映画がドタバタコメディであることが解っているのになかなか笑えなくてイライラするわけだ。そして刑務所にて預かっていた本人の私物返却のシーン、係員が未使用と使用済みのコンドームを手にしたところで大爆笑を取るという筋書きなのだが、大笑いできるほどのギャグでもない、先が思い遣られる。
プログラムの解説には、ミュージカル・コメディ・アクション大作とあるが、なんだかよくわからない。派手なカーチェイスだの、加えて軍隊までが登場する大捕物劇は無用の物だった。更に執念深くジェイク(ジョン・ベルーシ)をつけ狙う謎の女(キャリー・フィッシャー)に至っては登場の根拠が理解できない。 アクセントにしたかったのか、ラスト間際まで素性を明かさぬまま登場させるのだが、作品を盛り上げるどころか、シラケさせる要因になってしまった。ただし、懐かしのツィッギーが何となく意味もなく登場するところなどは面白い(女がツイッギーであることは、そのシーンでは全く解らなかった)。ラストにキャスト の紹介があり、そこで初めて彼女が実はかのツイッギーであることが判明するのだが、これは文字通り笑えて愉しい“イキな”演出だった。
全体としてはともかく、音楽がらみのシーンとなると話は別だ。いかれた教会(ジェームズ・ブラウンが牧師で登場)、下町の食堂(アレサ・フランクリンが女主人)、レイの楽器店(レイ・チャールズ)、カントリー&ウエスタン酒場、そしてパレスホテルでのコンサート。特に、酒場でC&Wでないと納得しない客の前で、 R&B専門の彼らが苦し紛れに演奏した誰もが知っている“ローハイド”は迫力満点だった。プライドやこだわりは何の意味もない、ここではやっぱり“ローハイド”、そうでなければ客は断じて許さないのだ。世の中は実に厳しい。
【1981/米】
私はこんな映画を観てきた...