「ダーティー・ハリー4」(バディ・バン・ホーン監督/1988/米)
『44マグナム』という名の方が有名だが、実はこれは『S&W M29』という拳銃の使用弾丸である。資料によると、銃本体は、スミス アンド ウエッソン社が開発した回転式拳銃(リボルバー)で、銃弾は、同社とレミントン・アームズ社が共同開発した狩猟用弾薬とある。
コーヒーショップにて、ウエイトレスを人質にした強盗に向けてのハリー・キャラハンの台詞(『ダーティハリー4/1983・米・クリント・イーストウッド監督』で、映画字幕では「撃て、望むところだ。」、テレビ放映での吹き替えでは「さあ、撃たせてくれぇ。」だったとのことで、その後流行り言葉のように汎く使われた。ただいずれもピンとこない、「やってみろよ、有意義な一日にしてくれ(楽しませてくれ)」というのが直訳で、できれば「やれるものなら、やってみな。そのかわりどうなっても知らないよ」としたいところだが、残念ながら、これではやはり長すぎる。もちろんここで、強盗の目の前には『44マグナム』弾がこめられた『S&W M29』の8インチの銃口があった。
しかし、ハリー刑事は決してむやみにこの銃を使いたいわけではない。持っている道具(玩具)はどうしても使いたくなるのが常だが、“ダメなものは、どんな理屈があろうとダメなんだ!”という意識が基本にあって、それはシリーズの『2』において、すでに明確にされている。許す、許さないはどんな時代にも、どんな人物にも左右さることはないというだけで、こんなところが、ダーティ・ハリーをして“アンチヒーロー”というそれまでなかった“称号”が与えられたのだ。時代の正義、誰かの正義など“くそくらえ”、やはり“良いこと”と“悪いこと”の判断はあくまでも普遍的であるべきだというのが、理念としてあると思う。「人は、良いことをしながら悪いことをし、悪いことをしながら良いことをする」と複雑な言い回しをしたのは“鬼の平蔵”だったが、寡黙かどうかの別はあっても、その底にあるものは同様のような気がする。