昔々その昔、東高円寺の四畳半一間のアパートに住んでいたころ、刑事の訪問を受けたことがある。
数日前に近所で起きたタクシー強盗の捜査ための聞き込みだという。
その際に警察手帳の提示を求めたかどうかは記憶にないが、部屋の中に導き入れたことは覚えていて、何をどのように話したか、とにかく事件当時の状況をその刑事は聞きたかったに違いない。ということは、何はともあれまず第一にこちらのアリバイ確認か?つまり、あれはもしかすると単なる聞き込みではなく、事情聴取、取調べとまではいかないまでも、“容疑者”扱いだったのかもしれない。
そうか、容疑者の一人となり得る資格ありの自分であったのだということに、それから何十年もたったある日、刑事ドラマの再放送を見ていて、突然思い至った。[2013]
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雌瀧と雄瀧が落合の瀧 追想
春は桜に秋は紅葉の白い滝。雌瀧と雌瀧が落ち合う先に、その名も伊予白滝駅。
駅から徒歩五分で、滝山の入り口の水車小屋が現れて、はったい粉をひいてもらった水車も、当時既に木製から鉄製になっていた。
『駅から五分』というのをお偉いさんは信じてくれず、じゃあ見に来てくれと頼んで二年、漸くの“視察”のあとの秋から、日曜と祭日に“準急” の何本かが停まることになった。
やがて、何か目を引く物が欲しいと、僅かばかりの予算がついて、十歳になった息子と二人で、ホーム中ほどに、 それまでなんだかわからない記念碑みたいなものがあった場所に池をつくり、大川から二人で担いで運んできた石を積み、裏にホースを這わせて、即席の“滝”を拵えた。 そこに、息子が滝川で釣ってきた赤鮠(あかはや)を放したものだが、地味で、それでも餌をやる必要もある、面倒なことになってしまった。