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「紅とんぼ」

 こんな唄もあったんだ…というものに出くわした。新宿駅西口から右に下った大ガード脇の飲み屋横丁が舞台であるのだろう。もう30年以上も大昔のことだが、ほぼ毎日(毎夜)通りがかっていた(そこに通っていたわけではない、まさに一角をかすめてその先の地を目指し、それから数時間の後終電間際に逆にその道筋を戻って行った)。

「紅とんぼ」
作詞:吉田 旺
作曲:船村 徹

空にしてって 酒も肴も
今日でお終い 店仕舞
五年ありがとう 楽しかったわ
いろいろお世話になりました
しんみりしないでよ ケンさん
新宿駅裏 紅とんぼ
想いだしてね 時々は

いいのいいから ツケは帳消し
みつぐ相手も いないもの
だけどみなさん 飽きもしないで
よくよく通ってくれました
唄ってよ騒いでよ しんちゃん
新宿駅裏 紅とんぼ
想いだしてね 時々は

だからほんとよ 故里へ帰るの
誰も貰っちゃ くれないし
みんなありがとう うれしかったわ
あふれてきちゃった想い出が
笑ってよ涕(な)かないで チーちゃん
新宿駅裏 紅とんぼ
想いだしてね 時々は

 そうしたある日のこと、勤めていた会社の先輩(小さな会社でとりあえずこの人が“社長”ということだった)に連れられてこの横丁の中の飲み屋に連れて行かれた。確か『静(しずか)』という店名であったような記憶があるが確かなことではない。ほぼ満席(といってもせいぜい五、六人だったが)状態で、“静”ママはすっかりおじさまになった“社長”に「坊やはこっち」とカウンター内の丸椅子に呼び込んだ。30分も居たか、勘定の段になって“静”ママが「1万2千円」と言い放ったのに“社長”は何も言わず支払って店を出た。戸口で一人飲んでいた若者の酎ハイのジョッキを持つ手が一瞬止まった、いくらなんでも高すぎるだろう…若い頃のツケを払わされているとのことだったが、これも定かなことではない。いずれにせよ微妙な金額ではある。