高橋真梨子がどこかのステージでこの曲を歌う映像を見た。極力情感を内に抑えて、表向きはサラリと歌っていて、それによって、むしろ深く浸み込んだ。併せてオリジナルの歌唱も聴いてみたが、もっと淡々と歌っており、これもなかなかに浸みる。昭和のそれも中頃までは、それが普通のことだったのだろう。子供のころ聴いたことがあるし、その後も出会ったことはあるやに記憶している。さすがに当時でもすでに“懐メロ”ということになっていたはずである。実に最近知ったのだが、この歌、よくよく調べると真の?!オリジナルは1935年に発表されたものなのだそうで、1960年にリバイバル曲として、井上ひろしがカバーしヒットしたのだそうだ、奥が深い!
「雨に咲く花」
作詞 髙橋掬太郎
作曲 池田不二男
唄 井上ひろし
およばぬことと あきらめました
だけど恋しいあの人よ
ままになるなら 今一度
ひと目だけでも 逢いたいの
別れた人を 想えば悲し
呼んでみたとて 遠い空
雨に打たれて 泣いている
花が私の恋かしら
はかない夢に すぎないけれど
忘れられない あの人よ
空に涙の セレナーデ
一人泣くのよ 咽ぶのよ
諦めたと言いつつ、まことに諦めの悪い歌である。ただ、この歌、“女歌”を男が歌うという形はとっているものの、何となくだが、主人公は実に“女々しい”男であるような気がしてならない。世の中には決して簡単に諦めてはならないことがある、どうにもならないなどと、ただただ手を拱いていては何も変わらないし、事は進まない。微力ながら場合によっては抗う心意気ぐらいは持ち続けていたいとは常日頃思っている。ただし、やはり恋愛に関しては、諦めのよさこそがどちらかというと無難な対応であり、この歌のような煮えきらない男(女であったとしても)への評価としては、十中八九「しつこく、重たい」ということになるのかもしれない。一歩間違えたら“ストーカー”だ!