『シシリアン』(1969/仏/アンリ・ヴェルヌイユ監督)
サーテット(アラン・ドロン)は、獄中仲間から手に入れた宝石強奪の仕事の話を、ビットリオ(ジャン・ギャバン)にもちかけた。心動かされた彼は、パリからニューヨークへ宝石を運ぶ飛行機を襲うことに決め、まんまと何億ドルという宝石を略奪してしまう。仕事が終った後、シシリーへ帰る支度をしていたビットリオは、孫の口から、サーテットと息子の妻であるジャンヌ(イリナ・デミック)に浮気の事実があったことを聞いた。シシリー人の面目を汚された彼は二人を射殺するが、電話を傍受していたル・ゴフ警部(リノ・バンチュラ)が、今度は彼の帰りを待ち受けていた。
アラン・ドロンとの共演を打診されたジャン・ギャバンは、やつをぶち殺す役ならやってもいいと言ったとか、冗談だろうし、それもまたキャンペーンの一環だったのかもしれないが、とにかくその通りの結末となった。音楽はまさにエンニオ・モリコーネ、“大河ドラマ”であるかどうかは別にして、ストーリー、そして音楽ともに『ゴッドファーザー』の基になったような映画である。いわゆる“大作”ではないが、個人的には断然『シシリアン』をとりたい、リアリズムの追求はそれはそれで結構なことではあるけれども、圧倒的にこちらの方が“ファンタジー”である。フィルム・ノワール、こうしたある時代のジャンルを識別しやすい作品は観ていて安心感(?)があって、愉しさだけが後味として残るのだ。