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訃報 和田誠

 イラストレーターの和田誠(わだまこと)さんが七日(2019.10) 、亡くなった(83歳)。本の装丁やポスター、映画などさまざまなジャンルで活躍したといわれるが、とりわけ映画、作品中の名台詞と自作のイラストを散りばめたエッセイ集『お楽しみはこれからだ』(全7巻)が愛蔵書として、わが“映画狂時代”の名残りとして、もう永く書棚の一角に鎮座ましましている。映画『麻雀放浪記』(1984)では、監督をし、なにしろ映画の面白さを知り尽くしてのものであり、白黒作品として、とにかく何処をとって観ても愉しい作品だった。阿佐田哲也の原作は当然としても、『シナリオ麻雀放浪記』(文庫本)なんてのも買って、徹底的にのめり込んだものだった。

「さすらい」

 一字一句がきちんと音符に乗っかっていて、歌唱の力と相まってこちらの心に沁みる沁みる…年を取ると余計に受け入れるのに何の抵抗もできなくなってくるし、そもそも拒む理由もない。『昭和の唄』だからというわけばかりではないけれど、長い時を経て、それぞれの記憶の数だけ“引っかかり”も多くなるということなのだろう。
 さて、何をどういう順番で聴いていくか、近頃は、藤圭子の当時売れたとは思えない(少なくとも引っかからなかった)唄と他人の唄をカバーした曲たちに凝っていて、片端から飽きもせず(飽きるまで?)夜中になるとこっそり聴いている。時間はたっぷりある…
 『さすらい』(克美しげるのものではないが、こちらもまたなかなかに沁みる…)、『はしご酒』、『京都から博多まで』(これはヒットした!このアンサーソングというか、その後、『私は京都に帰ります』というのもあったが、これはちょっと“リスト”には入れられない)、『京都ブルース』(これは良い)、『恋の雪割草』から『花は流れて』、『さいはての女』、カバー曲から『北の蛍』、『ひとり酒場で』(いずれも森進一)、そして『哀愁の町に霧がふる』(久保浩、他)、さらに青江三奈の『池袋の夜』、『長崎ブルース』では、またオリジナルとは違った趣で“沁みて”くる。というわけで、すっかり真夜中を越える。
   『さすらい』
    作詞:よしかわ かおり
    作曲:遠藤 実
    歌:藤 圭子
  ことば忘れたくちびるは
  草笛ひとつ吹けるだけ
  たんぽぽとって髪にさし
  今日さすらいの風の中

  ゆうべ抱かれたあの人の
  面影すらも今朝はない
  ただゆきずりのそれだけで
  心交わしたわけじゃない

 克美しげるの歌では、「泣いてくれるな流れの星よ 可愛い瞳によく似てる 想い出さすなさすらい者は 明日の命もままならぬ」で始まるのだが、女がさすらうとこうなる?恐ろしい!!