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ご当地ソングⅡ-3『東京・新宿篇』

 夕方6時にはもう飲んでいた。三丁目の末広亭のはす向かいにあった「S」(地下3階まであったような…)で、もしくは新宿駅西口近くの(今でもある…)「V」でまずは下ごしらえ、さていよいよ歌舞伎町の入り口はPPビルの9階だったか?(忘れた…)の「SB」(パブスナックといったか…)で調子を付けて、お次はミラノ座近くまで行って「Z」で腰を落ち着けた。元気と余裕(“スポンサー”)があれば、その何階か上に在った「G」でひとさわぎ?、さすがに同日というわけにはいかないが、或る日にはそこからほど近く、更に路地を入った「K」で終電をお構いなしに飲みもしたが、ほぼ唄っていた。やがて1時2時、戻ってきたタクシーに乗って、運転手には申し訳ないがもう一仕事していただいて東高円寺まで運んでもらった。自宅と通勤で8時間、会社に8時間、そして新宿(ほとんど歌舞伎町)に8時間と、思えば就職後何年間か、実に解り易い日常を過ごしていたものだと、40年も昔のことだが、我がことながら、感心もするし、むろん呆れもする。とにかく、見事に新宿に浸かっていた時代である。
 『新宿みなと町』(森進一)、『新宿のおんな』(藤圭子)、『新宿そだち』(津山洋子、大木英夫)、そして『なみだ恋』(八代亜紀…できれば「新宿なみだ恋」としてほしかったが)等など、銀座からは格落ちかもしれないが、安酒の似合う街としては、決して譲らない。当時の新宿(今はさっぱりわからない)は、その全てがいわば“裏町”だったような気がする。

   新宿は港町
   はぐれ者たちが生きる辛さ
   忘れて酒をくみかわす町
   人を押しのけて生きてゆくより
   安い酒に酔いたいね
   新宿…新宿…新宿みなと町

 さすがに、“はぐれ者”でこそなかった(と思っているが…)ものの、心情としてはこんなもので実によくわかる、半世紀近くを経て改めて想うに、また深く深く沁みるのである。「盛り場ブルース」(森進一)では、一番で銀座、赤坂、六本木…ラスト(八番)で渋谷、新宿、池袋…となるほどのラインナップと組み合わせだが、個人的には新宿は別格なのである。