ほろほろと
作詞者も作曲者もわからない、ただ唄うのは藤圭子。LP『蝶よ花よと』の中におさめられたオリジナルだというが、全く記憶に残っていない。というわけで、昭和の唄ではあるが、聴いてきてはいない、令和になって出くわして、今やけに〝沁みてくる〟のだ。
古びた唄を口ずさんでる
女の背中はからかっちゃ駄目よ
ほろほろとほだされて
くどかれて捨てられる
ないものねだりの幸せばかり
追ってきました
人生の吹き溜まり
女の愛は小さいけれど
裏切りのない心だけ欲しい
ゆらゆらと浮かぶのは
行き過ぎた恋ばかり
なぐさめひとつでやすらぐことは
所詮悲しい色恋の裏表
よそ者だけが集まる夜更け
酔えない酒でもグラスだけあくわ
よろよろとよろけても
明日もまた生きるのよ
未練と思えば良く見えるから
夢と割り切るねんころり子守唄
さて、〝ここにきて〟の藤圭子ベストファイブ…『京都から博多まで』(風が冷たい 小雨が重い…これはさすがに知っていた)、『さすらい』(ことば忘れたくちびるは 草笛ひとつ吹けるだけ)、『恋の雪割草』(あの人がいなくなる この町捨てて)、『哀愁酒場』(あなたにやさしく お酒をつがれ)、『新宿挽歌』(街の名前がかわろうと 街の姿がかわろうと)と、このあたりか?『命預けます』もいい、ただ『京都から…』もそうかもしれないが、これはヒットし過ぎで〝今になって、沁みる…〟にはあたらない??ところで、カバー曲にも〝沁みる〟ものが多い。『淋しいから』(中尾ミエ)、『さすらい』(克美しげる)、『波止場町』(森進一)、『池袋の夜』(青江三奈)、『誰もいない』(菅原洋一、『湖愁』(松島アキラ)、『浅草しぐれ』等など、いずれもオリジナルとはまた違った趣で、更によく〝沁みる〟のである。