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こんな映画を観てきた[29] 第三の男

第三の男[The Third Man(1949/英 監督:キャロル・リード)

 第二次大戦終戦直後、米英仏ソの四カ国による分割統治下にあったウィーンに親友ハリー・ライムを訪ねてきたアメリカ人作家のホリー。だが、ハリーの家に着くと守衛からハリーは交通事故で死亡したと告げられる。腑に落ちないホリーはウィーン中の関係者をあたり、真相究明に奔走するが……。出演はジョセフ・コットン、アリダ・バリ、そして謎の男ハリー・ライムにオーソン・ウェルズ。
 これはもう名作中の名作!まさに光と影の芸術である。闇の中から浮かび上がるハリー(オーソン・ウェルズ)の悪戯っぽい笑顔が忘れられない。またモノクロであってこその作品で、色がついたら興覚めどころか、全てが台無しだろう。さすがに封切りでは見ていない(生まれていない…)が、おそらくテレビ放映が最初だったと思う…もちろんどこだかの〝名画座〟で見直しはしたような記憶は遠いがある。
 もう半世紀近くも大昔のことになるが、この地を訪れて、三角形に開く地下水道につながるマンホールの蓋を探してはみたものの見つからず、それでも高所恐怖症をも省みず乗り込んだ、当時欧州一高いといわれたプラター広場の観覧車に乗り込んで震えていたことを思い出す。

こんな唄にでくわした[8]-オールド タイム ジャズ-

オールド タイム ジャズ

   OLD TIME JAZZ
   作詞・曲:佐藤三樹夫
   歌 :髙橋真梨子

 ネェ淋しいのならここに来てもいいわ
 ドアを三回静かに叩いて
 ワインも薔薇も何もいらないわ
 タクシーとばして一人で来てよ
 酔えないお酒を飲んでいるのね
 間違いみたいにダイヤルまわして

 想い出話は好きじゃないけど
 今夜だけあなただけつきあってもいいわ
 オールドタイムジャズ あの頃はやりの
 オールドタイムジャズ レコード聴きながら
 オールドタイムジャズ 一晩だけなら
 オールドタイムジャズ あなた 抱いてもいいのよ

 もう眠りたいならここに来てもいいわ
 毛布もシーツも変えてしまったけれど
 今夜は一人よあなたと同じね
 少し疲れたっ横顔見せて
 もう少しうまく嘘をついてよ
 部屋の明かりがそこから見えているのね
 照れくさそうに笑ってみせて
 今夜だけあなただけつきあってもいいわ
 オールドタイムジャズ もう一度はじめから
 オールドタイムジャズ 針を落として
 オールドタイムジャズ 一晩だけなら
 オールドタイムジャズ あなた 抱いてもいいのよ

 オールドタイムジャズ あの頃はやりの
 オールドタイムジャズ レコード聴きながら
 オールドタイムジャズ 一晩だけなら
 オールドタイムジャズ あなた 抱いてもいいのよ

 髙橋真梨子の歌にはいろいろな路線があって、それぞれに沁みるものがあるのだが、例えば時間を操ったり、神々まで登場する〝SFファンタジー路線〟には、『君の海へ』や『アフロディーテ』、あまり好きではないが、オリンピックのイメージソングなどもここに入るだろうか。〝ドラマ仕立て路線〟に『ごめんね』や『フレンズ』があって、『五番街…』や『ジョニーへの…』がこの路線のルーツかもしれない。とりわけちょっと暗めの〝サスペンス路線〟として、この『オールド・タイム・ジャズ』、『裏窓』、そして、最近になって、オリジナルではないが、こんな曲に出くわした、それが『恋心』。なお、この路線の先にはちょっと過激な『桃色吐息』や『はがゆい唇』などの展開があったということなのかもしれない。

   恋心
     作詞:BLANC RENE PASCAL
     訳詞:なかにし 礼
     作曲:MACIAS ENRICO
     歌 :高橋真梨子

  ムダな事さ 恋なんて
  深い悲しみを つくるだけさ
  ムダな事さ 恋をするなんて
  哀れなピエロの 一人芝居
  甘い恋の みじめな最後を
  君はぼくに おしえてくれた

  ムダな事さ 恋なんて
  苦い思い出を つくるだけさ
  ムダな事さ 信じるなんて
  裏切られて 傷つくだけ
  女心の冷たいしうちを
  君はぼくに 見せてくれた

  ムダな事さ 呼んでみたって
  消えた君はもう 帰らない
  ムダな事さ 泣いてみたって
  胸の炎は 消えはしない
  真実の恋の 愛の重さを
  君はぼくに おしえてくれた
  おしえてくれた

 『恋心』といえば、岸洋子。それを髙橋真梨子が唄うとこうなる…と言いたいところだが、実はこちらがオリジナルの詞(作曲者に訳詞とくればそういうことだろう)だった。元々は、年上の女性に翻弄された男の側の胸の内を歌ったものであった。

 悪い奴ら

 連日、〝悪事〟を暴かれて、されどしらを切ろうとしている顔が並ぶ。中でもとりわけ悪人顔(もうイメージだが…)、賄賂をもらったとされるあの人。3億円の保釈金で世に放たれてしまう者、とにかく逃げ隠れて時を稼ごうとする者、いろいろいらっしゃるが、この人の顔が特に悪人顔、刑事ドラマでも明らかに犯人、もしくはその背後にある人物といったところか。この人にもいいところはあるのだろうが、もう映像はそれを許さない、日に日に悪人度は上がる一方だ。これはなかなかに収拾はつかない(ついてはいけない!)。
 映像も時には嘘をつく。恣意的な演出がまたそれを際立たせ、尾ひれを加えた上で信憑性すら裏から貼りつけることさえしてしまう。恐ろしいが、かといって次々とところてん式に記憶の彼方に追いやってしまう、つまり盛り上がった分だけはやく忘れられてしまう、忘れさせてしまう、こちらの方が更に空恐ろしい。悪人は悪人として、悪人顔を貫き、それを全うして大団円を迎え、相応の罪を償って欲しいものだ。