月別アーカイブ: 2022年12月

こんな映画を観てきた[31]    ミスター・アーサー

   ミスター・アーサー
 (1981/米 監督:スティーブ・ゴードン)

 莫大な遺産相続を棒にふって愛する女性の許に走る放蕩息子を描くラブ・コメディ。よくあるお話ではある。
 ニューヨークの大富豪の御曹子アーサー・バック(ダドリー・ムーア)は、父親の言いつけに従って、ある大富豪の娘との結婚をとって巨額な財産相続権を譲り受けるのか、それとも夢を抱いて明るく生きるリンダ(ライザ・ミネリ)への愛をとって無一文になるのか、果たして…
 結局のところ、万事まるくおさまって、何一つ欠けることなく主人公の〝利益〟は確保されるという、いかにもアメリカ的なハッピーエンドではあった。都合がよすぎるとも思えるが、あくまでもファンタジーとあれば、これ以外の結末はないのだろう。これが欧州特にフランス映画などであったとしたら、こうしたエンディングにはならなかったろう、何かを犠牲にしたり、失ったり、どこかしらに悲劇の余韻を残したはずだ。もちろんどちらもそれぞれである。この作品で、忠義で教養ある執事のホブスンを演じたジョン・ギールグッドが第54回アカデミー賞の助演男優賞(1982年)を受賞したことは、まことに目出度く、『オリエント急行殺人事件』では不完全燃焼だったが、朗報であった。

こんな唄に出くわした⑨    ひとり泣く夜のワルツ

   ひとり泣く夜のワルツ

 発売は2008年、江利チエミさんといえば没年月日1982年2月13日(45歳没)だということだから、亡くなった後に発売されたようで、平成の唄というべきなのかみしれないが、このあたりの事情に興味はなく、とにかくこれが“昭和の沁みる唄”であることに間違いはないようだ。

 ひとり泣く夜のワルツ

     作詞:矢野 亮
     作曲:吉田矢 健治
     歌 :江利チエミ

   花が咲いても 淋しくて
   花が散ったら なお悲し
   誰が私を こうさせた
   夜が 夜が泣かせるの

   好きと何度も 書いた文字
   いつか涙で 溶けてゆく
   どうせ貴方にゃ とどかない
   夜が 夜が泣かせるの

   酔って忘れる お酒さえ
   思い出させる 苦い味
   胸にせつなく なぜ沁みる
   夜が 夜が泣かせるの

   とぎれとぎれの 夢にまで
   追えば遠のく じれったさ
   醒めりゃやつれた 影ばかり
   夜が 夜が泣かせるの

 サザエさんも、シンガーとしても、そして“悲劇”のヒロインとしてのイメージも全て彼女なのだが、それぞれが時系列上際立っていて、実に歴史的な存在であった。これはどうしたことか?明るさも、おかしさも、悲しみも兼ね合わせて持っていた、「おかしゅうて、やがて哀しき…それでもやはりハッピーエンド」、実にアメリカ映画的な人であったと個人的には思っているが、ただし“ハッピーエンド”であったかどうか、傍から見れば「そうではなかろう」というところだが、それは本人のみぞ知る…である。