ミスター・アーサー
(1981/米 監督:スティーブ・ゴードン)
莫大な遺産相続を棒にふって愛する女性の許に走る放蕩息子を描くラブ・コメディ。よくあるお話ではある。
ニューヨークの大富豪の御曹子アーサー・バック(ダドリー・ムーア)は、父親の言いつけに従って、ある大富豪の娘との結婚をとって巨額な財産相続権を譲り受けるのか、それとも夢を抱いて明るく生きるリンダ(ライザ・ミネリ)への愛をとって無一文になるのか、果たして…
結局のところ、万事まるくおさまって、何一つ欠けることなく主人公の〝利益〟は確保されるという、いかにもアメリカ的なハッピーエンドではあった。都合がよすぎるとも思えるが、あくまでもファンタジーとあれば、これ以外の結末はないのだろう。これが欧州特にフランス映画などであったとしたら、こうしたエンディングにはならなかったろう、何かを犠牲にしたり、失ったり、どこかしらに悲劇の余韻を残したはずだ。もちろんどちらもそれぞれである。この作品で、忠義で教養ある執事のホブスンを演じたジョン・ギールグッドが第54回アカデミー賞の助演男優賞(1982年)を受賞したことは、まことに目出度く、『オリエント急行殺人事件』では不完全燃焼だったが、朗報であった。