恋の雪割草
西国生まれにとって、馴染みのある花ではない。オンタイムの記憶はないが、最近になってこんな唄に出くわした。
恋の雪割草
作詞:山口 洋子
作曲:猪俣 公章
唄 :藤 圭子
あの人がいなくなる この町捨てて
ほの白い雪あかり しばれる両手
祈るように聞いてみた 春には逢えるのと
肩にちらちら嘘と一緒に
雪は舞うばかり
細い道しんしんと 雪は降り積もる
たたずめば鐘の音 かすかな汽笛
もう二度と恋なんか しないと誓っても
寒くないかと聞かれたらまた
胸がじんとする
泣きながら手をふった ちぎれるように
目の中を遠ざかる やさしい笑顔
今日からは一人ぼっち さみしい雪割草
夢をひっそり抱いて咲いている
北の遠い町
遠い、遠い昭和の唄である。こんな詞が沁みるのは、おじさん、いや相当な〝時間〟を引き摺ったきりの、おじいさんだけかもしれない。「しばれる」、「汽笛」、「ひとりぼっち」の「雪割草」とくれば、現代では全く通用しないシチュエーションなのだろう。藤圭子はまごうことなき当時のアイドルであったが、ヒット曲が凄まじ過ぎてこの唄までに辿り着かなかったか、それともそれらの間に埋没してしまったか、ほぼ記憶になく、令和になって出くわしたというわけだ。それにしても雪割草とは、可憐というより可哀そうなイメージがここでは漂うが、深雪と馴染みのない身としては、春の気配を感じさせる花と、その字面から読み取るばかりだ。