こんな映画を観てきた[8] 何もかも捨てて...

「まぼろしの市街戦」(フィリップ・ド・ブロカ 監督/1967/仏)

 部屋を片付けていたら(引っ掻き回していたら...)ベータのビデオテープがたくさん出てきた。30年以上も前のものたちだが、当時、 120分テープが1本確か4,000円もしていた頃のものだ。気に入った作品がテレビ放映される度に録画し、もちろん何度か見たのだろうが、 そのまま大切に?保管していたというのは、いくら好きなこととはいえ、我ながら呆れた所業と言わざるを得ない。 今更ながら経済的にも大丈夫だったのではと思いやられるところだが、何かを切り詰めていたのだろう。
 そんな中に、あった!『まぼろしの市街戦』。かすかな記憶だが、「日曜洋画劇場」での放映によるもので、 故淀川長治“先生”が特にいつもに増して熱っぽく推しておられたことを覚えている。
 ストーリーは、すでに霧の中だが、ありがたい“ネット”のお力をかりると...
 第一次大戦中、パリ北方の小さな村を撤退するドイツ軍は時限爆弾を仕掛けた。爆弾を見つけて撤去せよと命じられた主人公が見たものは、 村は噂におびえ、大半が避難し、残されたサーカスの動物と精神病院の“患者”だけだった。猛獣は往来をさまよい、 解放された“患者”たちはそれぞれ空家に入りこんで夢のような生活をはじめていた。彼は善良な患者たちを避難させようとしたが誰も動かず、 ついに最後の数時間を皆と共に楽しむ決心をし、時限爆弾を無事撤去した。そんな中、戦略的要地のこの村で独軍、英軍は激戦を展開、 相撃ちで双方とも全滅した。 “患者”たちは余りの狂気の沙汰にゲンナリして精神病院に帰っていった。やがて、主人公は軍を脱走し、素っ裸になって精神病院の門をくぐり、 “友人”たちの中に入って行く。
 そういえば、『ブラザー・サン シスター・ムーン』(フランコ・ゼフィレッリ監督/1972/伊・英)でも、 信仰に目覚めた主人公による同じようなシーンがあった。こちらはラストではなかったが、何もかも捨てて、己が信じる道を選択した潔さに、 諦めより希望を感じ取ったものだ。
 ついでながら、原題を『The King of Hearts』ということだが、これを『まぼろしの市街戦』としたのは、決して“名訳”ではないのだろうが、 なかなかに含蓄があって、見事な“邦題”だと思う。