「東京」

 「東京」といえば、マイペースの「最終電車できみにさよなら・・・」なのだが、個人的には…。こんな「東京」もあった。1993年(平成5年)のリリースというから、昭和の歌ではない。しかしその匂いは充分にあって、こちらもどうにも“沁みる”のである。やしきたかじん、ご存命中は、特にファンということでもなかったけれど、まことに失礼ながら、確かな歌い手(歌われていたことは知っていたが…)であったことを遅まきながらこの歌に出会って知ることとなった。

  作詞 及川眠子
  作曲 川上明彦
  歌  やしきたかじん

 あんたとなら いつ死んでもかまわへん
 忘れないでそんな女いたことを

 見上げた空さえも冷たい色やけど
 あたしが本気で惚れたひと
 そう生まれた街やから

 いとしさも 憎しみも
 すべてすべて ぎゅっと抱きしめ
 祈るように 今日も灯がともる東京

 夢だけ見て生きてるような あんたやった
 いつかあたし待つことにも慣れてたよ

 くすんだ風のなか肩よせ暮らしたね
 誰にも似てへんひとやけど
 本物の愛をくれた

 悲しくて 悔しくて
 泣いて泣いてばかりいたけど
 かけがえのないひとに逢えた東京

 痛いほど好きなのに
 なんでなんで 別れたんやろ
 いまもまだ 胸の奥揺れる東京

 悲しくて 悔しくて
 泣いて泣いてばかりいたけど
 かけがえのないひとに逢えた東京

 大阪弁の東京の歌というのも奇妙だが、東京で出会った男への思いを大阪の女性が歌ったものということで、沁みる程に何の違和感もない。
 さて、西国生まれの身としてはかくのごとく西側から東京を見た歌をどうしても贔屓にしてしまう。前出のマイペースの『東京』もそうに違いない、最終電車は東海道本線だと勝手に思っていたのだが、歌い手の出身が福島と後に知って、実はその“東京”は上野駅であったかと正直少々がっかりしてしまった。太田裕美の『木綿のハンカチーフ』では「東へ向かう列車で…」とあるから、これは明らかに西から東京を見ている。大阪限定というのも馴染みがあるかというとそういうこともないが、東京はやはりどうしても西から見ていたいのである。もちろんあくまでも個人の“見解”である。