こんな映画を観てきた[14]

-007 ロシアより愛をこめて-(1963/英・米/テレンス・ヤング監督)

 言わずと知れた、世界的に(特に日本で…)ヒットしたシリーズである。「スターウォーズ」シリーズとはまた違った意味での“定番”であり、どちらかというと日本の「寅さん」シリーズにその性格は近いかもしれないと思っている。最近では、原作も底が尽きて、タイトルだけ旧作から拝借したり、一部原作を流用して作り直したり、当然ジェームズ・ボンド役も交代している。どうやら新作も公開予定らしく、新ボンドの登場ということのようだが、ボンド氏はやはりショーン・コネリー、世代的にはロジャー・ムーア(昨年亡くなってしまった)ということになろうか、なんとかティモシー・ダルトンあたりまでは許容(?)したいが、その後のボンドには何の魅力も感じない。その間、ジョージ・レーゼンビーという俳優も一度だけ“担当”したが、女性運動の高まり(一時ボンド氏は女性蔑視の象徴のようにとられて、ストーリーにも影響を受け、なんと一度だけ結婚してしまうのである…これは後の作品につまらない影を落としてしまう…『消されたライセンス』でボンド氏の過去を説明させてしまった)やら、とにかくいろいろ時代背景もあって、シリーズにとっても、本人にとっても気の毒な一作(『女王陛下の007』)となってしまった。もちろんテリー・サバラスの存在感までは否定できない。記念すべき第1作『ドクター・ノオ』はそれなりに(?)面白かったが、やはり顔見世的で、MもQもまだ十分に馴染んでいない(S・コネリーはさすがに“はまった!”というか、その後出られなくなった?!)。ボンドガール(最近では何人も何人も出てきて、一括して“ボンドビューティ”などといっている)はウルスラ・アンドレス、なに人の血が濃いのか知らないが、印象としては“アメリカ的”過ぎて“わぁ綺麗!”ということにはならなかった(以後、感想の全ては個人的見解である)。全てにおいて花開き、その後ついに越せなかったのが次の『ロシアより愛をこめて』である。ダニエラ・ビアンキ、この人は“美しい”と言い切って問題はないだろう。経歴を見ると、準ミス・ユニバースであったとのこと、このこともまた本編の中でちょっとだけ触れている(タチアナがボンドを誘惑するシーンで「口が大きい」と本人に言わせている、その年のミスは大きくなかったのだろう)。イスタンブールからオリエント急行でラストのヴェニスへの移動も旅情を駆り立て、敵役のロッテ・レーニヤ、ロバート・ショー、そしてお味方ではペドロ・アルメンドロス、どれも怪優というかやはり名優揃いで、どなたも欠かせない、どれをとっても歴史に残る名作となった(異論もあろうが…)。
 話は尽きないが、シリーズ中、個人的に好きな作品は、『ロシアより…』は別格として、『ダイヤモンドは永遠に』(ラスヴェガスの雰囲気が再現されていて興味深く、後に訪ねる動機となった、あくまでも雰囲気で、ギャンブル自体にさほどの執着はない)と『黄金銃を持つ男』(なんといっても、敵役のクリストファー・リーが出演したことが嬉しかった)、どちらかというと“小品”とでもいえるようなものがお気に入りである。観ていて肩がこらず、ただただ愉しく鑑賞できていた。あまりドンパチやって、ボンド氏をそれこそ深刻な窮地に追いやるという展開は苦手で、観ていて疲れる。ボンド氏はアクションよりも豆(豆ではないなあ…)知識を嫌味なく(少々嫌味でも可?)、品良く披歴できてこそボンド氏なのであり、そこに妙なリアリズムなど持ち込まない方がよろしい…と思っている。音楽においても、『殺しの番号』のテーマは別として、『ロシアより…』はマット・モンローの歌でスタンダードとなった。さらにシャーリー・バッシーの、『ゴールドフィンガー』と『ダイヤモンドは…』は同列で、カーリー・サイモンの『私を愛したスパイ』、シーナ・イーストンの『フォ・ユアイズ・オンリー』あたりは今なお聴いていて決して古くない。