「八月の濡れた砂」

 同名タイトルの日活映画(1971年/藤田敏八監督)の主題歌である。日活といっても“ロマンポルノ”に移行する前の旧体制日活の最後の作品…らしいが、そんなことはどうでもよろしい。主演は順番からいうと広瀬昌助とあるが、どう見ても村野武範と、冒頭ですっかりその裸身に魅入られてしまったテレサ野田である。1971年というと、まだ上京しておらず(私は)、どこかの2番館、3番館で観たのだろう。
 後になって、このレコードを探し求めて、中野駅界隈をさまよってしまうのだが(とにかくなかなか見つからなかった記憶だけがある)、ようやくにしてこの曲が納められた石川セリのLP盤を見つけた時には、欣喜雀躍??日がな一日アパートのポータブルステレオ(要するに小さい、安いステレオセット)で聴いていた。

  八月の濡れた砂

   作詞:吉岡 治
   作曲:むつ ひろし
   歌:石川 セリ

  あたしの海をまっ赤に染めて
  夕日が血潮を流しているの
  あの夏の光と影は
  どこへ行ってしまったの
  悲しみさえも焼きつくされた
  あたしの夏は明日もつづく

  打ち上げられたヨットのように
  いつかは愛もくちるものなのね
  あの夏の光と影は
  どこへ行ってしまったの
  想い出さえも残しはしない
  あたしの夏は明日もつづく

 学生運動の波に乗り遅れ(といっても、上京する際に、それだけはやめてくれと親に釘をさされて、すなおに同意し、守り通した…)、進むべき方向を見いだせずにただ無為に時を過ごした身としては、かなり“痛い”映画であり、歌であった。