ご当地ソングⅡ-2 『東京・銀座篇』

 ロス・プリモスといえば、『ラヴユー東京』がスタートだが、このあとに来るのが、『雨の銀座』、『たそがれの銀座』で全盛期を迎えることとなる。この後に“銀座三部作”の締めくくりとして、『恋の銀座』というものがあったそうな…そもそもヒットしなかったか、記憶の片隅にも残っていなかったが、探し当てて聴いてみると、これがただただ甘ったるいだけで、森さんの唄でなかったらとても聴いていられない、恥ずかしくて…
 『雨の』では、街角で「嘘と知りつつ待ちました」、次なる『たそがれ』では、ご丁寧に一丁目から八丁目まで遊びまわって、『恋の』で極めて限定的な空間での、しかもベッタベタの恋模様。詞の内容に深みなど全くないが、雰囲気だけは充分なのである。
 銀座はもちろん敷居が高い、上京して半世紀になろうかという“歴史”を振り返っても、ここで飲んだりした経験は指折り数えられるくらいの回数、多寡が知れている。手持ちを気にして、心細くもいじましく過ごした新宿などとは雲泥の差なのだろう。人の金(仕事上のやむなしのつきあい)、もしくはそういったことをはるかに超越した“キャッシュレス”の街と言えなくもない。森進一の『一人酒場で』(これは『新宿みなと町』『雨の桟橋』とともに彼の隠れた?名曲だと思うのだが…)では「夜の銀座での飲む酒はなぜか身にしむ胸にしむ」とある。が、とてもそんな場所ではない。