ご当地ソングⅡ-4『京都篇』

   別れないでと抱きしめて
   愛してくれたあの人は
   白い夜霧に消えたまま
   淋しく今日も求めてうたう
   甘い京都の夜はふけゆく
    …
 とりあえず、京都といえばこの『京都の夜』(愛田健二)である。次いで渚ゆうこの京都シリーズ『京都の恋』、『京都慕情』ということになろうか。『京都から博多まで』(藤圭子)は名曲だと思うが、『なのにあなたは京都に行くの』(チェリッシュ)とともにいずれも主人公は京都にはいなくて、故にご当地ソングとはいえない。藤圭子はその後『私は京都に帰ります』で戻って来るが、こちらは全く印象にない。『女ひとり』、『祇園小唄』なんてものもあるが、ご当地ソングの範疇ではないような気がする(気がするだけだ)。『加茂の流れに』(かぐや姫)については、初代?かぐや姫のものでフォークソング、これもご当地ソングではないようだ。
『京都の夜』はこれっきり?となったが、おかげで“伝説”となった(ただし、途中の台詞は気色悪いばかりで聞いていられない)。渚ゆうこはその後『長崎慕情』から、ついには『さいはて慕情』に至り、更には『雨のブルース』、『風のブルース』と天まで上った…迷走のうちに空に消えたわけである。『雨の…』は名曲で、個人的には大好きな曲なのだが…
 長岡京市というところに父方の伯母が嫁いでいて、一度だけ訪ねたことがある。裏手に竹林を控えて、それはもう“京都”という雰囲気だった…といきたいところだが、高いビルこそないが、静かな住宅地だったと随分以前のことであやふやだが覚えている。ご当地ソングではそのほんの一角を切り取って歌ってこそのもので、そこらじゅう“京都”であるはずもなく、その必要もないのである。