こんな映画を観てきた[20]

旅情[Summertime]
   (1955/英 監督:デビッド・リーン)

 ジェイン(キャサリン・ヘプバーン、38歳…この年齢もまた物語展開の重要な要素だった)は、欧州見物の夢を実現し、ヴェニスにやって来た。一人で見物に出かけたサンマルコ広場の喫茶店で中年の男(ロッサノ・ブラッツィの視線に気付き、あわててそこを去った。

     …

 ヴェネチア・サンタルチア駅、ほんとうに海のうえだ。ヴェネチア・メストル駅からサンタルチア駅まで5分少々、線路と道路だけの海の回廊。街全体が冗談でなく今にも沈んでしまいそう。
 此処には車は走っていない。狭い路地と網目のような大小の運河、従って船か歩きだけが移動の手段で、迷路のような路地を縫うように進むと、広くて大きな教会と広場に出る。石畳にテーブルと椅子が整然と並べられ、その一角では夕方からの演奏の準備が進行中だ