こんな唄に出くわした[2] 晩夏

晩夏

 梶芽衣子である!『さそり』よりも、個人的には『鬼平犯科帳』のおまさ役につきる。昭和の時代の『怨み節』も悪くはないが、こんな唄に出くわした。2010年発売というから、比較的最近のものらしいが、ヒットした形跡は少なくとも記憶にない。歌い手によって、ジャンルが変わってしまうのかもしれないが、決してどこにも属さない、まさに〝梶芽衣子〟の世界に引き込まれてしまう。

     作詞:吉田旺
     作曲:杉本眞人
     唄 :梶芽衣子

  夏の日の幻 指先で弾けば
  さらさらと砂の上に
  くずれ落ちて 日暮れ
  紅の渚に 秋風のくちぶえ
  ヒューヒューと体の中
  逆さに撫でる
  風よ 起こさないで
  眠りかけた 愛の記憶を
  風よ うたわないで
  さむい名残り歌は
  アデューアデュー……夏よ

  海猫の悲鳴に 褪せてゆく太陽
  ゆらゆらと波に消えて
  海は夜の とばり
  月影に目を伏せ うずくまる心に15
  ひたひたと寄せてかえす
  海はやさしい
  波よ どこか遠く
  抱いて行って 流れのままに
  波よ 騒がないで
  夜が終るまでは
  アデューアデュー……夏よ

  波よ どこか遠く
  抱いて行って 流れのままに
  波よ 騒がないで
  夜が終るまでは
  アデューアデュー……夏よ

 梶芽衣子には彼女〝仕様〟の『夢は夜ひらく』があって、その歌詞はこうだ…

     泣くため生まれて きたような
     こんな浮世に 未練など
     これっぽっちも ないくせに
     夢は夜ひらく

 これはもう、この人にしか歌えないものだ。歌詞の意味などどうでもよろしい、甘さなどかけらもなく、諦めでもない、もっと暗い、もっと深いエネルギーを感じる。