こんな歌を聴いてきた  懺悔の値打ちもない

 歴史に残る〝昭和の名曲〟である…と思う。ストーリー、曲、歌唱、いずれも申し分のない作品である…と思う。この唄には〝幻の4番〟というものがあって(リリースされたものに入ってないだけで、テレビ放送などでは唄われているようなので、〝幻〟というのは言い過ぎ、むしろプロモーションの一環なのかもしれないが、監獄の中での状況設定が外された(もしくは外した)理由だと勝手に解釈している。

  懺悔の値打ちもない
    作詞…阿久 悠
    作曲…村井邦彦
    唄 …北原ミレイ

 あれは二月の 寒い夜
 やっと十四になった頃
 窓にちらちら 雪が降り
 部屋はひえびえ 暗かった
 愛というのじゃないけれど
 私は抱かれて みたかった

 あれは五月の 雨の夜
 今日で十五という時に
 安い指輪を 贈られて
 花を一輪 かざられて
 愛というのじゃないけれど
 私は捧げて みたかった

 あれは八月 暑い夜
 すねて十九を越えた頃
 細いナイフを 光らせて
 にくい男を 待っていた
 愛というのじゃないけれど
 私は捨てられ つらかった

   あれは何月 風の夜
   とうに二十歳も 過ぎた頃
   鉄の格子の 空を見て
   月の姿が さみしくて
   愛というのじゃ ないけれど
   私は誰かが ほしかった

 そうしてこうして 暗い夜
 年も忘れた 今日のこと
 街にゆらゆら 灯りつき
 みんな祈りを する時に
 ざんげの値打ちもないけれど
 私は話して みたかった

 こうして全て掲げてみると、4番は欠かせないものだと断言でき、あるとないではまさに大違いである。長すぎたか、それならむしろ最後が要らないと思うのだが…ドラマチックに過ぎるとされたか、または〝公序良徳〟に反するとしてと除外、自主規制されたか、いずれにせよ〝幻〟とされてもこの4番があったからこそ今に残る唄になったと思っている。