こんな歌を聴いてきた    心が痛い

 『私は泣いています』も良いが、断じてこちらをとりたい。こうまで直接的に言葉を突き付けられてしまうと、もう反論の余地はない。内向きの〝諦め〟でもなく、かといって打って出る〝抵抗〟の歌でもない、これほどの〝正直〟な心持を歌ったものを知らない。そのハスキーな声が、痛みを更に外連味なく表現してくれた。

  心が痛い
     作詞・作曲・歌:りりィ

   めずらしく街は 星でうずもれた
   透みきるはずの 体のなかは
   氷のように 冷たい言葉で
   結ばれた糸が ちぎれてしまう

     心が痛い 心がはりさけそうだ
     なにも いわないで
     さよならは ほしくないよ

   ふたりの間に ひびわれたガラス
   小さくふるえる うしろ姿も
   終りがきたのを 知らせるように
   だんだん涙に 消えていった

     心が痛い 心がはりさけそうだ
     なにも いわないで
     さよならは ほしくないよ

     心が痛い 心がはりさけそうだ
     心が痛い 心がはりさけそうだ

 りりィには俳優としてのイメージもあって、専門ではない淡々とした演技ぶりで嫌味なく、また観ていてつらくなるような拙さも感じられず、とにかく自然で軋轢なく受けいれられ身に沁みる存在感であった。これは近年特に印象にのこったもので、ドラマ『深夜食堂』(小林薫主演)でのゲスト出演だったが、晩年の〝煌めき〟だったし、存在感と共に素敵な女性だった。