こんな唄に出くわした[12]    南国の夜

   南国の夜

     歌 :日野てる子

   月は輝く南の
   はるかなる夢の国よ
   星はきらめきそよ風
   囁くはヤシの葉蔭に

          麗しは南の国
          さざ波は群れ歌いて
          喜びつきぬ常夏の
          はるかなる南の国

 ハワイアンである。特にハワイに憧れも思い入れもなく、若い時分にはその距離以上に遠い存在、聴いたことはあるが、聴きたいジャンルとはならなかった。年を経て、スチールギターとウクレレ、そしてなんとも甘ったるい歌いようが沁みてきたのだ。スタンダードといってもよく、いろいろな歌い手による歌唱があるが、ここでは日野てる子のものをじっくり聴いてみた。『夏の日の思い出』で華々しく世に出たわけだが、こちらはあくまでも歌謡曲ということで、彼女としては〝本分〟というわけではなかったかもしれない。
 彼女、実は同郷である。女子高在学中に市内のクラブ(『銀馬車』といったか?)で歌っていたとか、そんな〝伝説〟が遠い記憶だがまことしやかに流れていたような、もとより確証はない(10歳ほどこちらが年下でもあるし、同郷とはいえクラブなどとは無縁の更に田舎に居たものとしては、いずれにせよ所詮遠い存在であった)。ちなみに、渚ゆう子による歌唱も聴いてみた。歌詞(訳詞)は違うものだが、こちらも実に沁みるものだった。彼女もまた世に出る前はハワイアン歌手であったらしい。