こんな唄に出くわした[16]    驛舎(ステーション)

   驛舎(ステーション)

    歌手:テレサ・テン
    作詞:荒木とよひさ
    作曲:三木たかし

  落葉がホームに音もなく舞い散る
  まるで私の心のように
  人影とだえたベンチで
  過去から逃げだす汽車を待つ
  愛にそむかれても心だけは
  あなたの部屋に置いてゆくわ
  あの暮らしも想い出もこの驛舎に残して
  あの暮らしも想い出もこの驛舎に残して

  コートの襟たてうつむけば黄昏
  まるで映画の場面のように
  小さなトランクひとつが
  なおさら悲しい旅だけど
  愛にそむかれても死にはしない
  たとえつめたい冬が来ても
  あの暮らしが想い出がこの驛舎にあるから
  あの暮らしが想い出がこの驛舎にあるから

  愛にそむかれても死にはしない
  たとえつめたい冬が来ても
  あの暮らしが想い出がこの驛舎にあるから
  あの暮らしが想い出がこの驛舎にあるから

 『驛舎』というタイトルだけで、ちょっと聴いてみた。もうこんな驛は、少なくとも首都圏には存在しないだろう、近郊の路線でも、たとえある種の趣はあっても、それは姿かたちだけ、〝奥行〟を感じられない…だろう。今のそれは暮らしとか、それに基づいた思い出とは遠く離れたところにおさまっている。
 その昔、駅舎の前の広場は朝のラジオ体操のための会場で、眠い目をこすりつつ集まる子供たちの正面に大きな窓、それが開け放たれて、かなり大き目なラジオが登場する。そのスイッチを入れるのは長くそこに務めた父であったか…終われば、後輩たちのカードに判こを押して、三々五々みんな消え行く。父はラジオを片づけて、窓を閉めて通常勤務に就く、日常もドラマもそこに在った。