38年ぶりの奇跡

  監督 61 藤本定義

  1遊 23吉田義男
  2二 2本屋敷錦吾
  3中 7並木輝男
  4左 8山内一弘
  5右 19藤井栄治
  6一 24遠井吾郎
  7三 1朝井茂治  16三宅秀史
  8捕 29辻 佳紀
  9投 11村山 実  4バッキー

 これは1964年の阪神タイガースの開幕オーダーである。サードは朝井、投手は村山であったらしいが、それぞれ、三宅とバッキーであって欲しかった…と資料を見て思い、2名連記とした。
 この年、阪神は2年ぶりにリーグ優勝はしたものの、東京オリンピックの盛況ぶりに押されて?たいして盛り上がりも見せず、こちらも10歳とあっては記憶にも薄い。日本一になるのはそれから21年後、私は31歳になっていた。10代20代のどこかでその感激を味わうことができていたら、その後の人生も多少変わっていたかもしれないなどと、ひとの所為にはできないが、そう想ったりもする。それからまた実に38年、世はとびきりの経済効果などと賑やかだが、38で割ればたいしたことではない、一時の高揚は冷めると、その後の停滞期間も長引くとことは世の常だろう。そう思い、覚悟してしまうのが、これがまた阪神ファンの哀しい性なのである、もちろん人によってのことであるが…
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 それにしても…である、1番ショート吉田、2番セカンド本屋敷、まさに痺れる〝立ち上がり〟だ。とりわけバットを短く持って、それでいて忘れたころにレフトポール際にホームランを放ったりもする、また捕るよりも先にファーストに投げていたと言われる名遊撃手吉田義男をおいて他にミスタータイガースは居ない…と思っている。クリーンナップ陣は言うまでもなく一級品だが、6番ファースト遠井というのがまた心に沁みる。二日酔いで試合に臨んだことも一度や二度では…などという伝説の持ち主だが、見た目には派手さはなく、あくまでも地味、〝職人〟好きにはたまらない選手である。そしてキャッチャーは〝ひげ辻〟こと辻佳紀、阪神の捕手は田渕!ということに異論はないが、この選手のことは忘れられない。
 ただ、繰り返しになるが、この後もう少し、数年に一度でいい…日本一なんてことを少年たちに見せてくれていたら、それぞれもっと違った人生を歩むことになったかと想うと忸怩たるところもあり、それでも、だから嫌いに…などは決してなりはしないのである。