160本の運河、400の橋、やがて水面下に没してしまうと言われている水とゴンドラとヴェネチアン・グラスのロマンの都。
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ためいきの橋(右側が牢獄跡) | ヴェネチア・サンタルチア駅 |
ヴェネチア・サンタルチア駅、ほんとうに海のうえだ。ヴェネチア・メストル駅からサンタルチア駅まで5分少々、
線路と道路だけの海の回廊。街全体が冗談でなく今にも沈んでしまいそう。
此処には車は走っていません。狭い路地と網目のような大小の運河、従って船か歩きだけが移動の手段です。迷路のような路地を縫う
ように進むと、広くて大きな教会と広場に出ます。石畳にテーブルと椅子が整然と並べられ、その一角では夕方からの演奏の準備が進行中です。
アメリカから来たジェーン(キャサリン・ヘプバーン)がヴェネチアン・グラスを売る店のオーナーであるレナート(ロッサノ・
ブラッツィ)を初めて意識したのが、此処サンマルコ広場でした(『旅情』)。
エレベーターで大鐘楼へ、1000リラ也。遠くにリドの海岸、初老の男(ダーク・ボガート)が少年(ビョルン・アンドレセン)の
若さに嫉妬した、あの海岸です(『ヴェニスに死す』)。
さて、広場でビールを飲んでいると、やがて演奏が始まります。曲は勿論「サマータイム(旅情)」、ヴァイオリンも他のパートも
全員特大出っ腹で、少々イメージが違いますが、それでも雰囲気は満点、しばし映画の中に遊びます。
明けて、朝食を済ませ、フロントのおじさんと握手を交わしてチェックアウト。ヴァポレット(水上バス)に乗ってサンタルチア駅へ、
カレー(仏)経由ロンドン・ヴィクトリア駅行き「CALAIS-VENEZIA急行のパリ・東駅までの予約を取ります。パリまで所要時間15時間30分、15時の発車です
から、早朝のパリ・東駅のホームでクロワッサンとカフェオレの朝食ということになります。
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サンマルコ広場(大鐘楼より) | ゴンドラ乗り場 |
乗車までの時間、残された時を惜しんでひたすら街中を歩き回ります。飛び込んだお店は運河べりにあって(殆どの店は運河べりにあるの
ですが…)、間断なく窓の外を船が通ります。冷えた白ワインがとにかく美味しい!
ジェームス・ボンドがスーパー・ゴンドラで敵を蹴散らし(『007ムーンレイカー』)、貧しい大学生ジアンニ・
モランディと裕福な女子学生オッタビア・ピッコロがハシカみたいな恋をした(『家庭教師』)ヴェネチア。
しかしヴェネチアのすべてが生かされたのは何といっても『旅情』、静かなアドリア海を背景に、遠ざかるサンタルチア駅を名残
惜しんでいると、ジェーンでなくても、つい知る人もない駅の喧騒に向けてそのラストシーンを真似て列車の窓から手を振り
つづけます。
★★ 「リトル・ロマンス」 (1978年/ジョージ・ロイ・ヒル監督)
★★★ 「旅情」 (1955年/デビッド・リーン監督)
★★★ 「ベニスに死す」 (1971年/ルキノ・ビスコンティ監督)
「家庭教師」 (1974年/アルド・ラド監督)
「007 ムーンレイカー」 (1979年/ルイス・ギルバート監督)