年間1300万人の観光客を迎える超歓楽都市。愛も快楽も金次第、ルーレットやスロットマシンの音が絶え間なく、あっと
いう間に何万ドルという《財産》ができたり、消えたりしてしまいます。人生までつい軽く考えてしまいそうな刹那的瞬間だけ
が全ての街・・・
ロサンジェルスの国内線用のバーバンク空港から一っ飛び、ロッキーを越えると、そこは褐色の不毛の大地、ネバダ。人間性
の悪の部分だけを閉じ込めるにふさわしい光景です。その入口たる空港のロビーには邪悪の門らしく、いきなりスロットマシン。
ギャンブルで乱れ飛ぶキャッシュ、そして連日何処かで催される豪華なショー、止むことのないバカ騒ぎが砂漠の中の標高
620メートルの土地で繰り広げられる、それがラスヴェガスです。
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不毛の大地ネバダ |
午前3時、ホテルのカジノにて、小柄な美女のディーラーがカードを配るブラックジャックのテーブルをあとにして、
いよいよ一発勝負、いざルーレットのテーブルへ・・・。
本来、カジノの内部は撮影が禁止されていますので、映画でのカジノのシーンは全てセットです。『007 ダイヤモンドは
永遠に』では、そのカジノがパーフェクトに再現されていました。
そこでボンド氏はダイスでしたが、平然と勝ってしまいます。高額のチップが無造作にやり取りされるカットはまさにカジノ
の雰囲気満点!勝負がつけば、お次は美しい女性登場というのがお決まりのコースです。今回は《途中》まででしたが、
ナタリー・ウッドの妹、ラナ・ウッドがお相手をつとめました。
さて本物の勝負、こちらはルーレット。《8》に2ドル、そしてその周囲に1ドルずつ、みみっちい限りですが、このあたりが
分相応といったところ、テーブルにはもう一人アルゼンチンの大金持ち?色付きの高額チップ(白いチップは1ドル)をいたる
ところに賭けています。結果は・・・、何と大勝利の《8》にスッポリ、つづけて再び《8》、目の前にチップの山、信じ
られないことですが、白いコートの美女まで登場です。
ボンド氏のようにクールにいきたいところですが、勝利に、却って怖気づいてしまうようではギャンブラー失格、黒人の
ディーラーに《お礼》のチップを少しおいて早々に退散です。
元手の20ドル少々が10分足らずで、実に500ドル、人生観も変わります。良くても悪くても、とにかく恐ろしい街です。
ところで『オーシャンと11人の仲間』や『ラスベガス強奪作戦』など、カジノを襲う作品も当然出てくるわけで、映画の
世界では犯罪の匂いが禁じ得ません。
しかしながら実際にはカジノ側のガードは完璧で、拳銃を腰から提げたガードマン(もしかすると場所が場所だけに本物の
警察官かもしれません)が、現金の入った(たぶん)袋を持って往き来しています。
ラスヴェガスのもう一つの要素、それは現実を超越した夢の世界です。そしてその夢を形にしてしまったのが、F・コッポラ
の『ワン・フロム・ザ・ハート』です。
興行的には必ずしも成功作品とはいえませんが、ヴェガスのイメージを背景にして新しいミュージカル映画を作ってくれま
した。
ヴェガスのショーの世界から現実に降り立ったような夢の男レイ(ラウル・ジュリア)と夢の女ライラ(ナスターシャ・
キンスキー)が現実のカップル(フレデリック・フォレストとテリー・ガー)にそれぞれ関わってゆきます。
ここでコッポラ監督は、全て人工セットのヴェガス、書割のヴェガスを造り上げました。世界中のおのぼりさんのための遊園地
になりさがってしまったヴェガスにもう昔の華やかな夢はのこされていないとの判断からかもしれません。
したがって、この書割のヴェガスこそが本来のヴェガスと言えなくもない、いずれにしても人工的な美しさ、そして現実離れ
した喧騒が、この街の性格を極めて如実に表しています。
最後に、この州の法律では離婚、結婚が割合簡単に処理されるということで、このことを材料にした作品も少なくないよう
ですが、しかし、これも飽く迄手続き上のことで、現実的ではないと思われます。
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カジノホテルのエントランス |
★★ 『007 ダイヤモンドは永遠に』(1971年/ガイ・ハミルトン監督/英)
★ 『オーシャンと11人の仲間』(1960年/リュイス・マイルス監督/米)
★★ 『ワン・フロム・ザ・ハート』(1982年/フランシス・コッポラ監督/米)
『パリが恋する時』(1963年/メイヴィル・シェイヴルス監督/米)
『ブレスレス』(1983年/ジム・マクブライド監督/米)
『ラスヴェガス万歳』(1963年/ジョージ・シドニー監督/米)
『エルビス・オン・ステージ』(1970年/デニス・サンダー監督/米)
『ラスヴェガス強奪作戦』『キャノンボール2』