指摘されて追い出されるまで気が付きませんでした。慌てて降ります。通りの反対側にドーバー駅行きのバスが停まっておりました。 ようやく事情がわかってきました。全ては交通ストライキゆえのことなのです。一瞬目の前が真っ暗になりましたが、とにかくじっとはしていられません。 少しでもロンドンに近づかねばなりません。
 ドーバー駅。予定のヴィクトリア駅行きではなく、チャリングクロス駅行き臨時列車が出るといいます。これとて同じ思いの客たちが騒いだからのことなのです。 短い編成の列車で車内はすし詰め、実に2時間、蒸し風呂のような中をじっと辛抱します。
 列車がテムズ河を渡る時、赤いバスが走っているのを見てほっと一安心、ストライキは解決したか、一部解除になったか、いずれにせよアドバンスブッキング(予約) しておいたヴィクトリア駅近くのホテルに辿り着けます。ロンドンではストライキは日常茶飯事、いちいちニュースにならないようで、少なくとも情報として入ってきませんでした。

  ドーバーで置いてけぼりにされる恐怖を想うと、今でも背筋に冷たいものを覚えますが、悲劇もなんとか喜劇にしてしまうエネルギーが、その時の自分にまだ在ったということでしょうか、 折に触れこの経験をを思い出し、今の日常に活かしたいものです。