こんな列車に乗ってみた...

 

01 しおかぜ13号  02 たざわ5号  03 寝台特急あけぼの
04 特急ゆふいんの森号  05 特急北近畿8号  06 寝台特急出雲3号
07 寝台特急富士  08 特急スーパーひたち13号  09 寝台特急瀬戸
10 特急南紀9号  11 特急スーパーくろしお8号  12 特急いなほ10号
13 新特急谷川4号  14 快速仙山8号  15 快速海峡3号・5号
16 山形新幹線つばさ101号  17 寝台特急あさかぜ3号  18 特急あさま11号
19 あさひ324号

01 しおかぜ13号

  特急『しおかぜ13号』(JR瀬戸大橋線、予讃線)
     「しおかぜに おわれてはしる へんろ路」



 岡山駅で宇野線に乗り換えて、終点宇野駅から高松駅まで連絡線で約1時間、そこで徳島、 高知、松山方面へとそれぞれの目的地別に乗り継ぐ…。座席確保を目指して桟橋を走ったことも今となっては懐かしく思い出されますが、当時はそれが常識で、 乗り換えなしで海を渡り、そのまま目的地に至るなど、まさに夢のようであります。
18:04  7輌編成、特急『しおかぜ13号』宇和島行き(5〜7号車は途中の松山駅止まり)、岡山駅を定刻発車。
18:23  児島駅定刻発車。そしていきなりクライマックス!すぐに海上部分にさしかかって、瀬戸大橋線の大橋線たる由縁です。 『しおかぜ』はゆっくりゆっくりと、まるで海の静けさに気を遣うように、走るというにはあまりにおとなしい・・・
18:34  坂出港を左に見て、四国側に上陸。海上にあるは僅かに11分、ほんの5年前(昭和63年4月10日開通) のことを想うとこれもまた夢のような11分です。
 岡山駅から宇野駅まで快速で30分、宇高連絡線で55分、そこから先がまだ長い。しかし実は時間の驚異的短縮以上に心理的要素は更に大きいのです。 乗り換えなしに四国内を走るわが身を想うと、大げさでなく目頭も熱くなろうというもの、この感動に慣れてしまうのが惜しいくらいです。
18:40  とっぷり暮れて丸亀駅到着。
 一つ手前の宇多津駅(通過)までが「瀬戸大橋線」、この先が「予讃線」ということになります。
18:41  定刻発車。
18:44  多度津駅到着。阿波池田、高知中村方面へ向かう人はここで土讃線に乗り換えます。
18:46  定刻発車。平均時速108キロの車内表示。走行にゆとりがない、単線区間でこのスピードは無理があるのかもしれません。
19:03  定刻を2分遅れて観音寺駅発車。砂絵「寛永通宝銭形」でつとに有名ですが、駅より徒歩10分、 簡単な観光案内が車輌の電光表示パネルに現れますが、あの国鉄時代のことを想うとこうしたサービス、またまた夢のようです。
 豊浜、箕浦駅を通過して、これより讃岐(香川県)から伊予(愛媛県)に入ります。時速420キロ、遅れを取り戻そうとスピードを上げて頑張ります。 ローカルの特急はあくまでも健気であります。
19:14  懸命の疾りにもかかわらず、2分の遅れを取り戻せず、そのまま川之江駅到着。ということは、健気でもなんでもなく、 この区間は運行予定通りの走りでした。
19:19  遅れを3分に拡げて伊予三島駅発車。
 ここは製紙の町です。駅弁もすっかり食べ終えて、一杯気分のおじさん達は既に白河夜船。車内はだいぶん空いてきました。1分だけ遅れを回復して新居浜駅発車。
19:44  伊予西条駅発車(相変わらず2分遅れ)。標高1,982メートル、西日本最高峰、霊山「石鎚山」への登山口はここにあります。
20:02  いつの間にか、遅れをすっかり回復して、タオルの町今治駅発車。
 そして・・・
20:37  定刻、松山駅到着。
 この先、『しおかぜ13号』は後部車輌3輌を切り離して、伊代路を山道をとって伊予大洲駅の先で夜昼峠(長い隧道)を越え、八幡浜駅より豊後水道を望みつつ、 1時間20分を要して四国の奥の院、終着宇和島駅を目指します。
 
 ※列車の編成、時刻などは現在のものとは異なります。[1992]
 

02 たざわ5号

  特急『たざわ5号』(JR田沢湖線)
     田沢湖の見えない田沢湖線



10:40  盛岡駅発秋田駅行き『たざわ5号』に乗り込みます。先頭の1号車、前半分がグリーン車、 当然後半分の方に着席します。案内放送の東北弁が愉しい…。
10:48  定刻発車。座席のない人が指定席の中をうろうろして、結局女子高校生のグループに追い出されてしまいました。
 時刻表の地図を見ますと、なるほど納得するのですが、案内放送によりますと大曲駅で奥羽本線に入り、その際進行方向が逆になります。 つまり現在とは逆に5号車が先頭車輌になるという訳です。詰まらないことに感動してしまう身としては、誠に愉しみです。
10:56  小岩井農場で馴染みのある小岩井駅通過。女子高校生のグループが以外におとなしいので助かります。 思いの外広い平地の中を快走します。
11:01  雫石(しずくいし)駅到着。30秒停車で、同定刻発車。  いよいよ山間にさしかかりました。景色も単調になって、やはりといいますか時を合わせるように車内が賑やかになってきました。恐怖の(?) 女子高校生たちが遂に退屈し始めたのです。座席を対面式にする、おしゃべりの花が咲き乱れ、まだ辛抱できるレベルですが、たいぶん居心地が悪くなってきました。
 ちらっと垣間見えたのですが、グリーン車にはテレビがあるようです。VTRでしょうか、未確認です。当たり前のようにトンネルが続きます。 トンネルから出ると一面の紅葉、鮮やかで綺麗ですが、さすがに飽きてきました。川の水が透き通っていますが、こんな所に永く居ると、熱心なエコロジストになるか、 逆に、全く無関心になるかのどちらか極端でしょうね。
11:18  離合のため3分停車。田沢湖はもう間近です。擦れ違うのは上りの盛岡駅行き『たざわ10号』の筈ですが。
11:22  『たざわ10号』が通り過ぎて行きました。発車。
 田沢湖に注ぐのでしょうか、『たざわ5号』は蛇行する清流に芯を通すかたちで直進します。透明度39メートルの田沢湖、残念ながら車内からは見えません。 駅からバスで10分、何だか騙されたような気がします。
11:29  田沢湖駅到着。ホームの名所案内には、もちろん田沢湖、そして八幡平、田沢湖高原、以上…。
11:30  定刻2分遅れで発車。
 車内販売、女子高校生たちがにぎにぎしい…。
11:33  検札。右側から近付いてきた線路は、秋田内陸縦貫鉄道線です。
11:44  「みちのくの小京都」(車内放送)角館駅到着。構内の隅の方に、秋田内陸縦貫鉄道線・鷹ノ巣駅行き急行『もりよし号』が停車しています。 おばさんの団体がドッと乗り込んできました。こちらのパワーにもかないません。
11:45  定刻発車。
11:55  定刻1分遅れで大曲駅到着。
 そして・・・
11:57  遅れを帳消しにして定刻発車。
 車掌の言った通り、進行方向が逆になりました。つまり大曲駅に入って来た方に出て行く訳です。発車してすぐ進路を左のにとって奥羽本線に入ります。 いちいち座席の向きを変えるのも煩わしいし、自分だけで決められることでもありませんから、このままの態勢で居ることにします。 ほぼ全員が進行方向に背を向けているというのもなかなかに面白い光景ではあります。
 猛烈な睡魔から、車内の蒸し暑さで醒めて、やはり山の中ですが、秋田まではもう5分程です。漸く視界が開けてきました。秋田平野に入ったようです。 間もなく訪れる季節を長閑ですが、何処か厳粛な趣でじっと待っているかのような家々の佇まいです。
12:34  定刻、秋田駅到着。
 車掌は、秋田車掌区から立岡さんと佐々木さんでした。
 
 ※列車の編成、時刻などは現在のものとは異なります。[1992]
 

03 寝台特急あけぼの

  寝台特急あけぼの(JR東北本線、陸羽東線、奥羽本線など)
     わざわざ遠回りで青森へ



21:00  JR上野駅、寝台特急『あけぼの』14番線入線。
21:38  定刻発車。B個室、これがなんと2段式個室で、説明するのも息苦しくなるほど狭い、心理的に相当辛いものがあります。 入口の扉に至っては、まるでビルのダスターシュートの蓋です。室内で立ち上がれないのも不満です。加えて通路は両側に個室が並ぶものですから、擦れ違うのがやっと、 同じB個室でも、あの『出雲』とは雲泥の差でこちらの負け(?)。テンキー錠の具合も不調で、あちらこちらでトラブル発生の声が起こります。 普通のB寝台のほうがもしかすると開放感のある分快適かもしれません。売店なし、車内販売なしは許せるとして、この窮屈さはちょっとお勧めできない・・・
22:03  定刻、大宮駅到着。まだこの辺りは京浜東北線、つまり通勤電車のエリアです。
22:04  定刻発車。明るいホームに、こちらは浴衣姿、いつもながらこの不釣合いが嬉しいような、落ち着かないような…。 殆ど夜食に近い夕食を駅弁で済ませて、窮屈感を麻痺させるべくアルコールをほんの少々、そしてまた少々、ようやく旅情に浸れるようになります。
23:03  定刻、宇都宮駅到着。乗る人も降りる人もなく、ただホームの明かりが空しく輝き、侘しさ切なさが時の支配者です。定刻発車。
23:43  定刻、黒磯駅到着。ここで機関車交換のため8分間の停車。これで本日分の停車駅は終わりです。明朝は新庄駅(04:49)から営業再開です。
 いい頃合で寝かせてくれて、ある意味では優しい寝台列車といえましょうか。仙台駅を過ぎ、小牛田より『あけぼの』は東北本線を離れて陸羽東線に入ります。 更に新庄駅から奥羽本線に移るわけですが、そのどちらも夢の中のこととなるでしょう。ひとまずおやすみなさい…、貨物列車が擦れ違って行きました、頑張れ!JR貨物!!
23:51  定刻、黒磯駅発車。漆黒の闇の中を、その名の通りあけぼのの時を目指して疾走します。
 明けて(やはり、『あけぼの』は既に奥羽本線を走っておりました)窓の外には雪、北国であります。
05:57  定刻、湯沢駅到着。同発車。駅はまだ静けさを留めていますが、車内は賑やかになってきました。そろそろ降りる仕度が始まったようです。
06:06  定刻、十文字駅発車。車内放送が始まりました。「列車は時間通りの運転中です」 自信たっぷりの車掌のひと言で朝一番の放送を締めくくりました。
07:20  定刻、秋田駅到着。ここで5分停車。青森までは3時間、まだまだ先です。
 そして・・・
07:25  定刻発車。そういえば前回の秋田駅も束の間でした。
07:53  定刻、八郎潟駅発車。ホームの名所案内に「大潟村(14,785ヘクタール)近代的モデル農村」とあり、社会科で習いましたね…。
しかし、それにしても通勤ラッシュなどとは無縁の長閑さです。
08:26  定刻、東能代駅発車。ここから「五能線」が岐れています。
08:51  定刻、鷹ノ巣駅到着。ここから「秋田縦貫鉄道線」が角館方面に向け岐れています。同、定刻発車。
09:07  定刻大館駅到着。ここはJR貨物のターミナルのようです。本線よりも貨物列車用の引込み線の方が行き交うコンテナ貨車などで賑やかです。
09:08  定刻発車。
09:34  大鰐温泉駅到着。ホームが短く、後より1、2号車の扉は開かない旨の放送がありました。 そうまでして停車しなければならない駅でもないと思うのですが、やはり“温泉”というインパクトは強いということでしょう。
09:35  定刻発車。
09:47  弘前駅到着。青森行普通列車が接続していて、隣のホームで、この『あけぼの』からの乗り継ぎ客を待っています。同、定刻発車。
10:25  定刻、青森駅到着。誠に順調、走りに全く緩みのない約13時間、お見事!完璧な運行でした。
 
 ※列車の編成、時刻などは現在のものとは異なります。[1992]
 

04 ゆふいんの森号

  特急ゆふいんの森(JR鹿児島本線、久大本線など)
     別府温泉ではなく?!その奥座敷の銘を持つ人気特急



 別府温泉の奥座敷として、特に若者に人気の高い湯布院町の地名を愛称に持つ特急『ゆふいんの森号』。 博多駅から鹿児島本線を経由して、久留米駅で久大本線に入り、九州を横断するかたちで大分・別府に至る路線を3時間14分をかけて走ります。
09:30  博多駅3番ホーム。特急『ゆふいんの森号』入線。 乗車口にゆふいんレディ(スチュワーデス専門学校の生徒さんだという)がやさしくお出迎えしてくれます。
 床は板張りで、車内燈もアンティーク、あくまで“企画列車”です。
09:40  定刻発車。全席座席指定で、すぐにおしぼりのサービスです。
 予約は1号車(先頭車輌)3番の席で、目の前やや下がって運転席、パノラマが広がっていますが、惜しむらくは前面ガラスの中央を横切る太めの枠が目障りです。 車内にはBGMが流れています。
09:53  二日市駅到着。
 久留米駅までは鹿児島本線を走ります。
10:00  検札。車掌はチェックのブレザーに蝶ネクタイでさすが“企画列車”といったところですが、あまり似合っているとは言えません。
10:08  定刻2分遅れで鳥栖駅到着。相当数乗り込んで、ほぼ満席の状態となりました。
 ただひたすら田んぼの中を走りますが、雨に煙って山並みは見えません。
10:15  久留米駅到着。  注文しておいたサンドイッチとアイスコーヒーが届きましたので、早速片付けます。次は約50分ほどで日田駅、それまでノンストップですので車内探索に立つことにします。
 車内放送で、ゆふいんレディによる沿線案内。
 「田主丸(たぬしまる)は植木の町…」棒読みですが、まぁ勉強になります。
 ギャラリー、といっても車輌の3分のほどを仕切って窓を塞ぎ、そのかわりに絵をかけたといったところ。しっかりその絵を販売しているところはさすがですが、 果たしてここで絵を買うような人がいるのでしょうか。中央の木の椅子に座って、絵を見ながら過ごすのも悪くはないが、せっかくの列車、 やはり窓外の景色が一番のご馳走です。「ゆふいんの森」の名にふさわしく、日田に近づくにつれ、急に緑が線路そばまで迫るようになります。 このあたりが九州横断の道半ばでしょうか。やがて盆地が開けて日田に入ります。
11:01  定刻、日田駅到着。
 サラリーマンの団体が乗車早々から賑やかで、今夜は湯布院か別府あたりで宴会かもしれません。でも、ここでは周りへの迷惑も考えて、少し自重してほしいところです。
11:15  温泉の町、天ヶ瀬駅到着。川の両側に温泉が並びますが、とにかく静かで活気というものが感じられないほど、 鄙びた温泉町というのはまさにこういう所のことをいうのでしょう。
11:29  耶馬溪からの出口、豊後森駅到着。
11:56  秀麗な由布岳の麓に広がる盆地に入り、由布院駅(町名はとなりの湯の平町と合併して湯布院となった)到着。 映画祭や音楽のイベントも多く、温泉と文化の薫り高いしっとりと落ち着いた町です。ここで、さすがに大半が下車し、BGMは「蛍の光」になります。
12:42  定刻、大分駅到着。ほぼ全員が下車しました。
12:54  定刻、終点別府駅到着。
 
 ※列車の編成、時刻などは現在のものとは異なります。[1992]
 

05 北近畿8号

  特急『北近畿8号』(JR山陰本線、福知山線)
     名前に工夫が足りないか?!



09:15  城崎駅発、福知山線経由、新大阪駅行き特急『北近畿8号』入線。十分に鄙びた温泉町ではありますが、 何とか俗化を免れてなかなか味のある所です。
 それにしても、この北近畿8号、梅雨時ということもあって、相当に薄汚れてはおりますが、まあ健気に働いている姿は美しい・・・
09:23  城崎駅、定刻発車。  指定席車輌の乗客はチラホラですが、それぞれ温泉につかり、一晩過ごして、彼の地で新しい朝を迎えたある種心地よい疲れも見えます。
 この地方の特徴か、9時をすぎてもまだ残る朝靄の中、のどかな田園風景を車窓に映して走ります。
09:33  豊岡駅、定刻発車。
 突然田圃の真ん中に「但馬空港」という看板が登場、建設予定地なのでしょうか、それとも誘致運動の一環か、建設反対ならばはっきり“反対” というメッセージがあるはずですし…。
09:41  定刻、江原駅発車。
09:47  定刻、八鹿(ようか)駅発車。相変わらずの長閑さです。
09:53  養父(やぶ)駅通過。
 通過駅ですが、面白い駅名が続きますので紹介しておきます。
09:57  和田山駅到着。
 此処で播但線に乗り換えると姫路方面に向かうことになります。
10:07  上夜久野(かみやくの)といういかにも何か謂れのありそうな無人駅で信号待ち、2分停車。
10:28  定刻、福知山駅到着。これより、山陰本線を離れて福知山線です。
 1番線に到着し、すぐに3番線の京都駅発倉吉駅行き特急『あさしお1号』を見送ります。
10:30  同、定刻発車。
 車内販売が始まり、コーヒーにお茶、ジュースが売れてゆきます。
10:38  丹波竹田駅にて、信号停車。さすが単線区間であります。
 時刻表によりますと、ここで特急『エーデル鳥取』と離合する筈ですが…。
10:40  エーデル特急(これは企画列車)のヨーロッパ風(?)の列車が擦れ違って行きました。
10:54  定刻、1分遅れで栢原(かいばら)駅発車。名所案内板には八幡神社と木の根橋と、特別知られた名所でもないと思うのですが、 それでもどやどやと団体客が乗り込んできました。
11:00  谷川駅通過。ここから加古川線が岐れています。
11:24  下滝駅にて3度目の信号停車。
11:07  大阪駅発城崎駅行き特急『北近畿5号』が最後尾にパノラマカーを連結して通過して行きました。
11:16  定刻、篠山口(ささやまぐち)駅発車。迫り来るほどの山間ではありませんが、 平地を選んでは右へ左へとカーブを繰り返します。
11:36  定刻、三田(さんだ)駅発車。ここまで来ると、もう大阪、神戸のベッドタウンということになるのでしょう、 これまでの田園風景とは多少趣きを異にします。広々とした雰囲気があり田圃はまだ続きますが、その向こうには開発されたばかりとおぼしき団地が見えます。 ふと気付くと複線になっていました。
 意外でしたが、三田を過ぎるといきなり渓谷地帯に入ってしまいました。長いトンネルが続きます。
11:42  トンネルの中からホームが始まって、川の上までさしかかる武田尾駅通過。
11:50  定刻、宝塚駅発車。
 駅前の開発が進んでいる様子で、ここでも街のイメージは一新してしまうのでしょう。
12:08  定刻、大阪駅発車。
12:14  定刻、新大阪駅到着。
 新大阪駅が終着ということもあって、新幹線への乗り継ぎも便利です。
 
 ※列車の編成、時刻などは現在のものとは異なります。[1992]
 

06 寝台特急出雲3号 plus

  寝台特急『出雲3号』(JR東海道本線など+北近畿タンゴ鉄道線)
     歴史ミステリーをお供に神話の国へ

 

21:20  定刻、東京駅発車。
 旅立ちは、やはり梅雨時ということもあって雨です。闇に向けて静かに滑り出しました。すぐに検札。
21:45  定刻、横浜駅発車。
 予約をしたB個室には、向かい合ったソファーが二つ(両方の座席部分を引っ張り出してつなぎ合わせるとベッドになるわけです)、 さらにその上に補助ベッドがありますが、実際に使うとなるといささか窮屈です。何はともあれ、とにかく一杯、そしてもう一杯・・・
22:39  定刻、熱海駅到着。
 すっかり雨も上がって、アルコールが充分に効いてきて、なぜか切なさがつのります。シャワーはA個室の“お客様”のみに許される特権とか、 そこまで差をつけなくても…。
22:41  同、発車。
22:58  沼津駅。
23:39  静岡駅。  今回下車する予定の豊岡駅には早朝の6時19分の到着。そこで、通路にて車掌さんにモーニング・コールをお願いしておきます。
 「どちらまででしたか?」
 「豊岡までです」
 「では6時にノック致しましょう」
 「よろしくお願いします」
 大丈夫だとは思うのですが、まずは念のために。
 よほど寝心地が良かったか、それともアルコールの効果覿面といったところでしょうか、全くの意識不明で、以下に参考のため停車駅と発車時刻だけを紹介しておきます。 00:35 浜松駅、03:42 京都駅、05:08 綾部駅、05:20 福知山駅。
 明けて、福知山駅を出るところで、車掌さんの助けを待つまでもなく、爽やかにとまではいかないまでも、何はともあれ無事に起床、身支度を始めます。 顔を見せた車掌さんには、もちろん心よりの感謝の気持ちを伝えます。
 今回は、北近畿タンゴ鉄道への乗換駅、豊岡駅で下車しますが、この『出雲3号』は城崎を過ぎ、有名な「余部(あまるべ)鉄橋」を渡って、鳥取、 米子を経由して終着出雲市駅を目指します。ちなみに、18時47分東京駅発の『出雲1号』は更に西の浜田駅が終着です。

 
乗換  北近畿タンゴ鉄道(豊岡駅〜天橋立駅)
 此処で播但線に乗り換えると姫路方面に向かうことになります。
06:40  北近畿タンゴ鉄道、豊岡駅発西舞鶴駅行き普通列車が3輌編成で発車、旧国鉄時代そのままに単線区間をトロトロと走ります。と、 ほどなく但馬三江駅に到着。
06:57  甲山駅到着。高校生の姿がちらほら、随分と早い通学ですが、 この列車を逃すと次は8時以降になるとあっては遠方に通学するにはもう早起きするほかありません。
07:00  なんと、普通列車で検札です。乗り換えの際の改札が無かったことを思えばやむを得ません。
07:15  網野駅発車。駅のホームに「ハマナス最南端」という標識がありました。
07:22  「丹後ちりめん」発祥の地、峰山駅到着。
07:48  天橋立駅到着。
 第三セクター化以来、主要駅は改築され、どこもそれぞれの名物なり名所をモチーフにしたものになっています(やや急ごしらえの印象は拭えませんが…)。 観光路線がそのための基本コンセプトとすれば当然の配慮なのでしょう。
 
 ※列車の編成、時刻などは現在のものとは異なります。[1992]
 

07 寝台特急富士

  寝台特急『富士』(JR日豊本線-山陽本線-東海道本線)
     闇の中をひたすら東へ向かう列車・・・



17:15  定刻1分遅れで発車。湯の町別府を後にします。あの立ち上る湯煙りの数はやはりただものではありません。
 13時15分に南宮崎駅を出発した寝台特急『瀬戸』は別府まで既に4時間を費やしています。明朝9時58分に東京駅に着くまでの合計20時間43分をかけて黙々と疾走するわけです。
17:58  卑弥呼伝説のメッカ、宇佐駅到着。駅名標の宇佐の下にローマ字で≪USA≫、当然ですが、ここはあくまでも日本…。
18:18  中津駅到着。福沢諭吉の故郷、駅前広場に例の≪人の上に・・・≫の碑が見えます。定刻、発車。
19:10  行橋駅、小倉駅を過ぎて、定刻、門司駅到着。ここで関門トンネル内を牽引する専用の機関車に交替、というわけで5分停車です。
19:15  懐かしくも笛による発車の合図で、定刻、発車。すぐに関門トンネルに入ります。
19:21  地上に出て、山口県であります。やがて下関駅に到着して、再び機関車の交換、4分停車です。19時28分定刻に発車して、 空腹も極致となり食堂車に移動します。メニューに≪もつ煮込み≫というのがあって意外でしたが、これとチーズにソーセージ、そしてビール、最後に皿うどんと、 これはもうコース(?)です。外はやっと暮れなずんできました。
20:07  宇部駅到着。  ほろ酔いから本格的に酔いがまわって、やがておやすみなさい、こんなに早く出来上がるのも旅のせいでしょうか。
 連結されているサロンカーをのぞいてみます。30人ほどがゆったり座れるスペースとソファーなのですが、誰も居ません。ほぼ満席のはずなのですが、 これはいかにももったいないというほかありません。
20:41  防府駅到着。  缶ビールにおつまみか、ビニール袋を提げて改札を駆け抜けて中年男性滑り込みセーフ!サロンカーに入ってきました。既に相当アルコールがまわっていて、 もう殆ど酩酊気味、“さわらぬ神に・・・”で退散します。
21:05  各駅の到着予定の車内放送があって、いよいよ放送終了、これより先が正真正銘の寝台列車です。 深夜ですので予め記しておきますが、0時45分岡山駅到着を最後に明朝5時19分名古屋駅まで停車駅はありません。それではおそろしく早い時間ですがとりあえずおやすみなさい…。
21:11  下松駅到着。次は柳井・・・
07:59  富士駅到着。
08:15  沼津駅到着。上段を使っていた初老のご夫婦下車。昨夜車掌に申し出ておられたこともあって、寝台の上下段の交換を提案したのですが、 かえって気を遣わせてしまったか、辞退され、とうとう上の段から一度も通路にすら下りられた気配がありませんでした。
 図らずも、一夜を同じ閉ざされた空間で過ごした見知らぬ乗客が一人、また一人降り:ていきます。 偶然とはいえ、日常でないあるひと時を共有した者同士のわずかな親近感がすかに胸に痛みます。旅とはまさにそうしたものなのでしょう。
08:34  熱海駅到着。
 意外に東京まで乗り切る人が少ないことに気付きます。考えてみれば東京へは飛行機など移動の手段としては、選択の幅も大きく、 途中駅の利用者こそ列車は便利ということかもしれません。
09:35  横浜駅到着。
09:58  もう何の感慨もなく、定刻、東京駅到着。
 
 ※列車の編成、時刻などは現在のものとは異なります。[1992]
 

08 特急スーパーひたち13号 plus

  特急『スーパーひたち13号』(JR常磐線など+日立電鉄線)
     “旅情”としてはやや物足りないか?!
     平日はスーツ姿が占める“ビジネス特急”



10:35  予定よりかなり早い入線(時刻表によると、10:46)。  特徴的なフェイスのデザインで人気は高いが、それほど良いとも思えない。車輌そのものにデザインを凝らして直接的に表情を持たせてしまうのはいかがなものか、 むしろ車内においてデザインを工夫し、各種設備の配慮をするという方向性を守って欲しいところです。“旅情”ということについては、 行き先表示の文字だけで充分なのですから。
 自由席車輌の前にもかなりの列があり、指定席にも殆ど空席がない、しかも大方が一見してビジネス目的と思われます。 もしや全員が日立駅を目指しているのではありますかいか…。
11:38  定刻、土浦駅発車。
 まだ十分に桜の残る常陸路をひた走ります。
12:07  定刻、水戸駅到着。  ここで、かなりの客が降りてしまいました。そういえばここは茨城県の県庁所在地、これくらいの利用は当然のことなのかもしれません。 主要都市間をダイレクトにつなぐ列車、これがすなわち《インターシティ》というわけです。
 後方の1〜7号車が高萩止まりで、前方(8〜11号車)車輌が平駅行きです。
12:08  同、定刻発車。  発車寸前、会社員風の男性が忘れ物のコートを取りに戻り、慌てて出て行きます。ホッとした空気が車内に流れますが、 発車後今度は連絡を受けた車掌が棚の上にポツンと残った別のコートを所有者のいないことを確認して持って行きました。もう少し眠りたい疲れた身には、 むしろ短すぎる乗車時間ということでしょうか。
 スピード表示があって、最高120〜130km/hといったところです。久慈川の鉄橋を越えて・・・
12:21  定刻、大甕(おおみか)駅到着。日立電鉄線がこの駅で接続しています。
12:23  同、定刻発車。
 ここでも、かなりの客が降りて行きました。ビジネスマンが多かったように見受けられました。
12:26  定刻、常陸多賀駅発車。

 あと4分で日立駅、旅情という点では少々物足りない90分でしたが、もしかするとこれはもう立派な通勤圏なのかもしれません。少なくとも“日帰りコース” であることだけは確かなことのようでした。
 
おまけ  日立電鉄線(鮎川駅〜大甕駅)
 JR日立駅から車で10分、日立電鉄線の始発駅「鮎川駅」にやって来ました。ここからJR線との接続駅大甕駅まで乗車することにします。地元の高校生でしょうか、 グループで待合室に入ってきますが、いずこも同じで、どうしてかくも元気なのか、とても賑やかです。
16:40  折り返し運転の常北太田駅行き2輌編成の赤い電車がホームに入ってきました。降りる客が終ると、ようやく改札です。 料金は鮎川駅から大甕駅までで270円。
16:48  定刻、鮎川駅発車。  朝夕には結構本数も多いようですが、昼間の時間帯は1時間に2本といったところでしょうか。幾つか小さな駅に停車して、 都合15分足らずコトコトと走って、あっという間に大甕駅到着です。生憎この日は雨模様でしたが、好天だと海辺をゆっくり走るこの電車、さぞかし眺めもいい筈です。
 
 ※列車の編成、時刻などは現在のものとは異なります。[1992]
 

09 寝台特急瀬戸

  寝台特急『瀬戸』(JR東海道本線、山陽本線、瀬戸大橋線など)
     ちょっと贅沢にA寝台個室

 

20:50  東京駅10番ホーム、寝台特急『瀬戸』号入線。
 寝台列車というものにもだいぶん驚かなくなりましたが、それでも何となく侘しさといいますか、物悲しさは相変わらずです。
 A寝台3号車5番個室。2間つづき(もちろん隣室へのドアは両側から施錠できます)、思ったより広く感じます。洗面台、テレビ(ビデオ放映)、鏡、 複数チャンネルのBGM、コンセント、小さなテーブル、そして目覚まし時計、おまけに持ち込んだビデオテープを楽しむこともできます (録り溜めしてあるNFLの実況を2、3本持ってくれば良かった)。さすが、飛行機より高いだけのことはあります。
21:00  定刻、発車。
21:15  検札。
 この時、車掌さんから部屋のカードキーとシャワー券(A寝台は無料)を渡してくれます。備え付けの洗面用具もそのまま記念に持ち帰っていいとのこと、 嬉しい気配りです。
21:24  定刻、横浜駅発車。
 ビジネスホテルの中途半端な空間ならいっそこのくらいコンパクトな方が潔い。十分くつろげます、早速ウィスキーをちびっと・・・
22:26  定刻、熱海駅発車。なにしろ分不相応にA寝台などに居るものだから、興奮冷めやらず、時の経過が惜しいばかりです。
22:56  定刻、富士駅発車。
23:23  定刻、静岡駅到着。
 
00:22  定刻、浜松駅到着。これであとは姫路駅までノンストップ、ほろ酔いでよく眠れそうです。
 明けて、岡山駅から瀬戸大橋線に入り、児島駅を過ぎるとすぐに瀬戸大橋にかかります。明けきったところで進行方向左手に朝日が昇る、寝台列車ならではの感動です。
07:35  定刻、終着高松駅到着。
 降りてしまうのがまことに惜しい、快適な個室寝台の旅でありました。
 
 ※列車の編成、時刻などは現在のものとは異なります。[1992]
 

10 特急南紀9号

  特急『南紀9号』(JR関西本線、伊勢鉄道線、JR紀勢本線)
     闇の中を紀の国へ



 ワイドビュー・特急南紀9号入線。場違いなどと言ってしまうと名古屋に対して甚だ失礼ですが、シルバーメタリックの美しいフォルムです。
19:20  名古屋駅発車。車内に飲物の自動販売機があって…ということは、車内販売がないということでしょうか。 窓外はとっぷりと暮れて、景観の楽しみはありませんが、その分列車の旅そのものをじっくりと観賞できるというものです。
 車内販売のサービスはありましたが、案の定「外郎」のお土産売りでありました。「ワイドビュー」と改めてことわるだけあって、4輌編成の小じんまりとした編成ですが、 通路から一段高くなっているブルーのシートなどインテリアもまずまずです。運転手は志賀さん、車掌は村井さんです。

 さすがにこの時刻に南紀に向かう人は少なく、たぶん近距離が主体であろう自由席の方はともかく、指定席には空席が目立ちます。


19:33  車内放送、「間もなく渡りますのが、木曽川、長良川、揖斐川です」。
19:38  「その手は桑名の...」の桑名駅到着。
19:39  定刻発車。三重県には初のお目見えですが、但し通過するのみです。
19:49  四日市駅到着。
19:51  定刻発車。関西本線をそのまま進むと、亀山に達し、そこで方向転換をして、つまり先頭車輌が最後尾となって紀勢本線に入る、 というのが事件解決の鍵となった西村京太郎のトラベルミステリーがあったような・・・南紀9号は、それでは遠回りになりますので、 途中通過駅の河原田駅から伊勢鉄道線に入り、鈴鹿駅に停車した後、津駅で紀勢本線に戻る、つまりJR線に復帰するということになります。
19:55  ポイントで大きく揺れましたので、もしかすると伊勢鉄道線への入口かもしれません。
19:58  鈴鹿駅到着。
20:11  日本一短い駅名「つ」到着。
20:26  ついつい「松坂牛」と言ってしまいたくなる松阪駅到着。下車直前まで眠っていたのか、おばさん二人慌てて下車していきました。定刻発車。
20:32  多気駅到着。参宮線、伊勢市・鳥羽方面は乗り換えです。
20:33  定刻発車。名所案内に「斎宮跡(さいぐうあと)」とあり、斎宮とは「いつきのみや」、つまり天皇家の神事を執り行う場所、 この一帯は神話の一方のメッカであります。とっぷりと暮れて、車内もだいぶん緊張感が失せてきました。
20:55  三瀬谷駅到着。三つ先の通過駅に伊勢柏崎という駅があって、更に三つ先が次に停車する紀伊長島駅、 どうやらこの辺りが伊勢と紀伊の国境いのようです。
20:56  定刻発車。
21:21  紀伊長島駅到着(三重県北牟婁郡紀伊長島町−駅名標より)。
21:23  定刻発車。誠に順調な運行であります。
21:43  尾鷲駅到着。いよいよ紀伊半島らしくなってきました。かなりの下車があって、すぐに発車。
22:11  熊野市駅到着。殆どの客は下車し、車内の空気もお疲れ模様。
22:12  定刻発車。そして22:30定刻新宮駅到着。
 この南紀9号は、この後普通列車に格下げされて終着紀伊勝浦駅に向かいます。
 
 ※列車の編成、時刻などは現在のものとは異なります。[1992]
 

11 特急スーパーくろしお8号

  特急『スーパーくろしお8号』(JR紀勢本線、阪和線)
     期待外れ?!初めてのパノラマカー



 初めてのパノラマカー乗車、グリーン車であります。が、パノラマと言っても、 運転席を通しての視界が開けているだけで別段驚くほどのこともない、車内のインテリア、居心地ともに南紀9号に及びません。
08:58  新宮駅、定刻発車。いきなり海、太平洋です。身の程知らずのグリーン車、その報いか期待が大きかっただけに、 外したかな(?)という印象もありましたが、車窓の太平洋は文句なく“ご馳走”です。波浪注意報発令中でありながら、快晴、 高い波がいかにも太平洋に相応しい...
 左に海、右に険しい山並み、『スーパーくろしお』は狭い平地を選んで、あの地図で見る紀伊半島の形に沿うように走ります。
 「紀の松島」那智勝浦(駅名は紀伊勝浦)、車内放送によりますと、ここは白浜と並ぶ温泉地でまぐろ漁の拠点、更にここから車で25分の那智の滝、 まあこんなところでしょうか。
09:14  紀伊勝浦到着。定刻発車。
09:21  太地(たいじ)駅到着。発車。
09:35  古座(コザ)駅到着。発車。紀伊田辺発新宮行き普通列車が離合のために待っていました。さて、 次は「ここはくしもと・・・」の鯨も見える(?)串本です。紀伊半島の南端、潮岬のたもとです。車内放送の合図も「われは海の子」から当然「串本節」 になりました。
09:47  串本駅到着。定刻発車。紀伊半島というのは想像以上に険しい土地です。確かに海岸線に沿って走っているはずなのですが、 時折青い海が現れる他はまるで山間部を走る路線のようです。
10:19  周参見(すさみ)駅到着。発車。『スーパーくろしお』が停車するにはいささか小さすぎる駅ですが、 名所案内にすさみ温泉と釣りのメッカと堂々の表記、なるほど・・・
10:27  紀伊日置駅通過。ここで下り新宮行き『スーパーくろしお1号』と擦れ違います。
10:33  椿駅到着。定刻発車。ここも全くの山間の駅です。やはり名所は椿温泉とありますが、 やはり特急が停車するというのは少々優遇し過ぎかもしれません。次の白浜駅に関しては、まあ文句のつけようもないところです。
10:41  定刻、日本三大温泉の一つ「白浜温泉駅」到着。ここで『スーパーくろしお8号』は特急にあるまじき行動をとります。 何と6分間の停車、温泉で一夜を明かした観光客の乗車をじっくりと待ってあげようとでもいうのでしょうか。
 ふと気付くと、日差しが先ほどとは逆に右側から入っています。いよいよ方向を大阪方面に変えて、列車は北上を始めました。定刻発車。
10:53  無人の朝来駅に下り特急『くろしお3号』が来るのを待つために停車。それが6分も遅れているとのことで、 当然こちらにも影響が出ます。
10:58  遅れている『くろしお3号』が申し訳なさそうにやって来ました。発車。
11:04  定刻6分遅れで紀伊田辺駅到着。
11:05  発車。通路を挟んだ隣の男性が禁煙席で煙草を吸っています。指定席であるいじょうそれは承知しておいてくれないと困ります。 そこにタイミング良く禁煙席の案内放送、男性は煙草を消しましたが、喫煙に関する議論はともかくとして、基本的なルール、エチケットは守らねばなりません。
11:29  安珍・清姫の道成寺駅通過。
11:30  1分だけ遅れを回復して御坊(ごぼう)駅到着。発車。複線区間に入りました。
11:35  なんと、温かいおしぼりのサービス、グリーン車だけのサービスなのでしょう。
12:05  車内放送の合図が「てんてんてんまり・・・」になり、定刻4分遅れで和歌山駅到着。ここまでが紀勢本線、 ここから先が阪和線ということになります。
12:07  定刻4分遅れのまま発車。終点まであと1時間というのに、かなりの乗客があって、 グリーン車は大方塞がってしまいました。一見ビジネスマンが殆どです。
 車内放送の合図が「青い灯赤い灯・・・(青と赤が逆かもしれません)」になり、大阪です。
14:45  定刻3分遅れで天王寺駅到着、ここから環状線を使います。
13:03  最後に帳尻を合わせるかたちで遅れを完全に取り戻して、定刻新大阪駅到着。
 
 ※列車の編成、時刻などは現在のものとは異なります。[1992]
 

12 特急いなほ10号

  特急『いなほ10号』(JR羽越本線、白新線)
     刈り取られても“いなほ”は疾る



13:00  秋田駅。青森駅発、新潟駅行き特急『いなほ10号』到着。
 秋田で何かの大会でもあるのでしょうか、北から南から続々と高校生たちがここ秋田駅に降り立ちます。一つの車輌を占領していた彼らが一斉に降りようとするものですから、 こちらはなかなか乗車できません。その動きも実に緩慢で、しかも乗車口にあるくず入れ近辺にそれぞれがごみを散らかして行きます。 乗車を待つおばさんたちの焦燥が濃い…。やっと乗り込み始めると途端に発車のベル、緊張が走ります。それにしても絶望的な状況であります。 あまり説教臭いことを言いたくありませんが、折角のマナーを学ぶチャンスを教員、生徒諸君の双方が放棄している現実を目の当たりにするに及び、残念と言う外ありません。
13:03  落ち着く間もなく、定刻発車。前の座席で早速トラブル、予約指定がダブッているという。 “JRに限って”そのようなことはまずない筈ですが、片方のおばさんが私に双方の切符を確かめて欲しいと依頼します。何だか大岡越前になったような気持ちです。 当事者同士では冷静になれないのでしょう。見ればもう片方のおばさんが手にする切符は今まで乗ってきた列車のもので、 乗り継ぎの際に改札を通らずにそのまま持っていたもの、もう一枚の切符が出てきて一件落着。
 次いで弁当売り登場。秋田駅では30分程の乗り換え時間の間に、一旦外に出て駅舎を撮影、更に自分の土産に地元の吟醸酒を一本買って、遂に弁当まで気も手もまわらず、 車内での購入となりました。何のこともないすき焼き弁当、テーブルも小さくゆっくりお茶も飲めません。
 ホッと一心地ついたところで、羽後本庄です。これはもう旅などと言えるものではなく、単なる移動です。荷物さえなければこれもなかなか面白いのですが…。
13:36  羽後本荘駅到着。同定刻発車。
13:47  離合のため、西目駅臨時停車。
 「いなほ5号」が通過してすぐに発車。右てに海、日本海です。鈍い色の海はやや重い感じがしますが、やはり山間を走るのと違って、穏やかな気持ちになります。
13:50  仁賀保駅到着。車掌は「にかほ」の“に”にアクセントを置きました。
13:51  定刻発車。
 左てに頂に雪の高い山、位置からいってあれが鳥海山でしょうか。
14:01  象潟(きさかた)駅到着。切なくなるほど静かな町です。定刻発車。
14:24  遊佐(ゆざ)駅到着。定刻発車。
 この辺りを庄内平野というのでしょうか、刈り取りの終った田圃はただただ荒涼としていて静かなるのみです。
14:36  酒田駅到着。次の『いなほ12号』はこの駅が始発です。どんより曇って、無責任な旅人のイメージ通りの東北です。
 乗車してきた新手のおばさん、またまた切符のトラブル、先に座っていたおばさんに促されてよくよく切符を見ると車輌番号が違っていて早々に決着と相成りました。 おばさんはとかく思い込みが強く、こうしたトラブルは後を絶ちません。
14:46  余目(あまるめ)駅到着。ここから陸羽西線が岐れています。
 ここで定刻を2分遅れて発車。
 やがて山並みが迫るようになって、そろそろ庄内平野も終わりのようです。
15:08  三瀬(さんぜ)駅通過。
15:16  あつみ温泉駅到着。駅名はひらがなですが、旅館の看板によりますと温海温泉と書くようです。1分だけ遅れを回復して発車。
15:25  鼠ヶ関(ねずがせき)という何とも凄い名の駅を通過。
15:28  府屋(ふや)駅到着。同発車。
15:32  勝木(かつぎ)駅通過。ユニークな名の駅が続きます。
 村上が近付いて、ここで電流切り換えのため車内が一時停電します。
15:58  村上駅到着。
16:07  坂町駅到着。ここで、米沢方面への米坂線が岐れます。定刻1分遅れのまま発車。
 定刻2分遅れで発車。
 日本海に沈む夕日を見ることができず誠に残念ですが、まぁやむを得ません。
16:22  新発田(しばた)駅到着。ここから羽越本線を離れ、白新線に入り、終着新潟駅を目指します。
 定刻1分遅れで発車。
 阿賀野川を渡ります。
16:42  結局、定刻1分遅れのまま新潟駅到着。さあ、上越新幹線への乗り換え時間は僅かに10分、出口に“溜まっている” おばさんたちを見ると正味何分残るか、気が重くなりますが、ドラマチックな走り込みになりました。
 新幹線に旅情は必要ないか?!
 
 ※列車の編成、時刻などは現在のものとは異なります。[1992]
 

13 新特急谷川4号

  新特急『谷川4号』(JR上越線)
     少々の雪ではびくともしない雪国列車



 宿の仲居さんは、事も無げに「50センチも積もったでしょうか」と言いますが、 もちろん雪のことです。朝、一面の雪景色で南国育ちにとっては相当に迫力のある“絵”です。特別な交通情報もなく、列車は平常通りに運行されているのでしょう。 ただただ恐れ入るばかりです。
 雪のJR水上駅、映画で見覚えのある寒々とした余りにもイメージ通りの冬の駅であります。新しい雪で枕木も消え、僅かにレールの姿を残す3番線に新特急『谷川4号』 が入線してきました。
11:02  1番線を前触れもなく除雪車が通り過ぎて行きました。水上駅定刻発車。裸の木々に咲く眩しいばかりの雪の花、 掛け値なしの雪国の感動です。
11:08  上牧(かみもく)駅停車。行楽列車はスタート直後、一駅一駅丁寧に停車して客を拾って行きます。
 ところで、この新特急『谷川4号』、特急と名乗っているくせに、何と窓が開きます。だから“新特急”というわけでしょうか、上越新幹線開通後の特別措置と考えますが…。
11:14  後閑(ごかん)駅停車。やはりちらほらと乗客がありました。定刻発車。
 民家の屋根に積もる雪が心なしか少なめになってきたように思います。雪国もそろそろ終わりのようです。
11:19  沼田駅到着。かなりの乗客があって、同、定刻発車。まだ空いていますが、お定まりの座席指定のトラブル発生、 指定席ならではのことです。露骨に不機嫌な様子で、対座式に席を占領していた若い女性のグループが移動します。当然のことです。君たちが絶対に悪い! 世の中全てが自分の思う通りにいくとは限らないのです。断じて指定券通りの席を譲らなかった男性に拍手を送ります。
 短いトンネルを抜け、すぐにもう一つトンネルを抜けて…、雪はあっという間に消えてしまいました。ほんの数分の間に景色がこれほど一変してしまうとは、峠を越えた、 いえ潜り抜けたようです。梅の花まで咲いていてすっかり春、驚きです。
11:25  検札。いかにも好人物といった小柄な石田車掌、スタンプを打って次の席へ…。
11:35  渋川駅到着。水上行き普通列車が出て行きました。
 定刻発車。5号車指定席は大方塞がってしまいました。
11:47  新前橋駅到着。ここで吾妻線の万座・鹿沢口方面からの、同じく新特急『草津4号』を待って連結し、 都合14輌の大所帯となって上野駅を目指すことになります。
11:56  小さな衝撃があって、『草津4号』が連結されたようです。
 車内販売、ここは高崎名物『だるま弁当』を買わずばなりますまい。
 新しい編成で定刻発車。
12:05  高崎駅到着。同、定刻発車。
 新幹線、信越線、八高線のターミナルとして発展著しい高崎、ここから先はもう首都圏と言っても差し支えないでしょう。
12:18  本庄駅到着。定刻発車。ここでもかなりの乗客があって、もしかするとこの特急は、在来線の特急の大半がカットされた今、 利用頻度においてむしろ注目されて人気があるのかもしれません。新幹線を利用するほどではないが、かといって普通列車では時間がかかるということで…。
12:26  “ネギ”の深谷駅到着。発車。先ほどの『だるま弁当』は、栞にある「おいしい弁当に挑戦」 というほど威張るほどのものでもないと思いますが、山菜弁当としてまずまずといったところでしょうか。
12:34  熊谷駅到着。定刻発車。ここから大宮までのおよそ25分間が最長のノンストップ区間で、 ここへきてやっと特急らしき走りを見せてくれます。
12:58  大宮駅到着。定刻発車。
 浦和駅、赤羽駅と停車して…。
13:27  定刻、上野駅13番線に到着。スタートは雪深い水上駅、そして終着は快晴の東京・上野駅、 まさに移る季節をドラマのように見せてくれた2時間半でした。
 
 ※列車の編成、時刻などは現在のものとは異なります。[1992]
 

14 快速仙山8号

  快速『仙山8号』(JR仙山線)
     分け入っても分け入っても蒼い山



10:50  定刻、北山形駅発車。
 仙台までちょうど1時間であれば、これはなかなか便利な路線です。すると、仙台から東京まで新幹線で2時間ですから、山形から乗り継いで3時間、 『つばさ』で2時間半ということは、30分程度の短縮のためにしては、少々大き過ぎる投資ではなかったか…。東京と直接結ぶという、 これはむしろ精神的な事業なのかもしれません。いずれにせよ、多分に政治の匂いがします。
11:00  山寺駅到着。山寺、即ち立石寺へ徒歩5分、芭蕉の「静けさや岩にしみいる蝉のこえ」のお寺…と思うのですが。
11:01  定刻発車。紅葉の中、分け入っても、分け入っても、果てしなく山の中です。
11:20  作並駅到着。言わずと知れた作並温泉であります。
11:21  定刻発車。駅名標によりますと、ここは既に仙台市青葉区とありますが、山の中です。
11:33  愛子(あやし)駅到着。
11:34  信号待ちということで、定刻2分遅れで発車。ここもまた青葉区。北仙台駅に近づいて、住宅も増え、 やっと街らしくなってきました。
11:43  北仙台駅到着。高層マンションが林立して、これは仙台のベッドタウンです。そしてここもまた青葉区、 仙台市青葉区というのはかくも広い…、まさか細長いわけではないでしょうから、政令都市にするのに相当無理をしたのかもしれません。すぐに発車。
11:48  定刻1分遅れで、終点仙台駅到着。
 この仙山線、石巻への仙石線、そして東北本線、新幹線と、仙台市はまさに東北地方の一大拠点です。
 
 ※列車の編成、時刻などは現在のものとは異なります。[1992]
 

15 快速海峡3号・5号

  快速『海峡3号・5号』
  (JR津軽海峡線など…青森→吉岡海底駅→函館駅)
     海底駅見学用リレー列車



11:02  青森駅6番線。入線中の快速『海峡3号』に乗り込みます。 1号車、戸口には「海底駅専用」とありますので、海底駅(吉岡海底駅/要予約)で下車(見学)する客のための車輌です。
09:14  5番線に上野発寝台特急『鳥海』が到着しました。最近トンネル人気も一息ついて、 海底駅見学者も減少気味という報道があったばかりですが、どっこい平日にもかかわらずなかなかの盛況ぶりでほぼ満席といったところです。
09:21  定刻発車。青森駅は本州最果ての駅でもあり、列車は全て一方向に出て行き、 やがて行き先別に放射状に分岐することになります。車掌は蟹田駅までは、青森運輸区の長尾さんの担当です。トンネル進入の刻限は10:16とのことです。 台湾からの団体でしょうか、明らかに中国語でこれが実に賑やか(ほとんどうるさい状況)、 大声でしかも延々と喋り続けるその男性のエネルギーに感心するやら呆れるやらで、日本人の団体も海外では頗る評判が悪いということですから、これはもしかすると国民性などというものではなく、“団体”というのがいけないのかもしれません。それにしても周囲は旅情も損なう大迷惑、基本的なマナーは世界共通と思うのですが…。
09:50  蟹田駅到着。ここで乗務員がJR北海道所属に交替します。中国語は相変わらず車内に響き渡っています(車掌も注意しづらいでしょう、 他の乗客もただただ我慢するのみ)。
09:56  定刻発車。不愉快な団体のお蔭ですっかり興醒めですが、運行の方はいたって順調です。
 中小国駅を通過して、ここまでが津軽線、列車は「津軽海峡線」に入りました。長短のトンネルが続きますが、これはまだ青函トンネルではありません。 「青函トンネル入口の町、今別」などという看板の登場でいよいよお目当てのトンネルも間近です。
10:17  「青函トンネル」に入りました。全長53.85km、陸の部分が30.55kmで海底部が23.km。当然といえば当然なのですが、窓の外は真っ暗で、 車内の表示板でその進行を見ているだけですから、それほどの感激があるわけではありません。入口より5kmを経過しました。海面下96m です。
10:26  竜飛海底駅通過。入口より15km、海面下156m 。
10:31  入口より20km、海面下216m 。
10:34  入口より25km、海面下240m 。
10:36  トンネルの壁面のライトが一瞬グリーンからブルーに変わり、どうやらトンネルの最深部を通過したようです。 表示板の赤ランプも上昇し始めました。
10:38  入口より35km、海面下224m 。
10:41  トンネルの壁面にねぶたの発光サイン。
10:43  定刻、吉岡海底駅到着。ここで予約をしているこの1号車の乗客だけが下車して、 係員引率によりトンネル内を見学します。
12:25  快速『海峡5号』(見学リレー号)定刻を1分少々遅れて吉岡海底駅発車。約1時間半の見学コースということになります。 トンネルの中をただ歩いただけのことですが、しっかりと記念のオレンジカードを買わされてしまいました (あくまでも自由意志/体験証明書と1,000円分のオレンジカード2枚がセットされたものが2,000円ということでJRとしてもサービスのつもりなのでしょう)。
12:29  入口より40km、海面下104m 。表示には海面下とありますが、正確にはすでに陸地の部分にさしかかっています。
12:34  入口より45km、海面下44m 。この5kmで60m を駆け上ったことになります。
12:38  入口より50km、海面下0m 。メッセージにも「まもなく青函トンネルを出ます」の表示。平凡な田園の景色(北海道知内町) でも新鮮に映ります。木古内駅が近づき、左てから「江差線」の線路が合流してここまでが「津軽海峡線」です。
12:53  木古内駅到着。ここから函館駅の一駅前の五稜郭駅まで「江差線」を走り、そこから一駅区間だけ函館本線を使います。同、定刻発車。 右てに海が開け、今度は北海道側から津軽海峡を眺めています。
13:34  定刻、函館駅到着。誠に他人迷惑な“偶然の同乗者”はついに最後までうるさく喋り続けました。 これから彼らは何処へ行くのでしょう・・・
 
 ※列車の編成、時刻などは現在のものとは異なります。[1992]
 

16 山形新幹線つばさ101号

  山形新幹線『つばさ101号』
  (山形新幹線)
     紅葉の中で違和感いっぱいの流線型



 早朝の東京駅は少々つらい、しかし一度は乗っておきたい『つばさ』に会うために、 5時起きも我慢して這い出してきました。車幅調整用のタラップを踏んで、未だ真新しい車輌に乗り込みます。
07:28  東北新幹線『やまびこ101号』との併結という珍妙な編成で定刻発車。
 外見の派手さ(決して良いデザインとは思いませんが)に比べ、車内はいたってシンプルで、座席テーブルの裏側にある車内の案内と、 機関誌の設置くらいが特徴といえましょうか。
07:32  上野地下駅通過。素通りといった感じで侘しい限りです。ビジネスの匂いは一切しません。 乗客の殆どが団体旅行といった雰囲気で、アタッシュケースよりは土産袋がよく似合います。
 福島駅までノンストップ(101号は福島駅のみの停車)、新幹線に比べ座席一つ分小さい訳ですが、座席そのものも若干小さめの感じで、 やや窮屈かもしれません。福島駅までは、東北新幹線の線路を使わせていただく訳で、福島駅以降は新幹線並みのスピードは出せません。 やはりこれは新幹線というよりは“新線”と位置づけるべきでしょう。ただ“新幹線”と言ってしまった方が聞こえが良い、政治的な配慮が見えなくもありません。
08:03  小山駅通過。
 山の頂きはもう雪化粧。車輌のサイズのわりに窓は大きめでなかなかの景観です。電光掲示板のニュース・サービスもあります。
08:11  宇都宮駅通過。
 平日の早朝にもかかわらず、空席もなく、なかなかの営業成績です。運行本数の関係もあるかもしれませんが、 物珍しさの一時期を過ぎてもこの盛況ぶりであれば、まずは合格というところなのでしょう。繰り返しますが、これはあくまでも観光路線、その証拠に、 弁当ばかりか、この時間に早くも缶ビールを開ける音がそこかしこから聞こえてきます。
 福島駅の手前で車内放送…『やまびこ』を切り離すので、お乗り間違いのないようにとは言うものの、連結部分を通り抜けることはできませんから、 その心配はまずないでしょう。
08:53  定刻、福島駅到着。さすがにここで降りる人は少なく、空いた席もすぐに埋まりました。コート姿の男性が乗り込んできました。 東北はもう冬間近です(10月下旬)。2分停車の間に、後部の『やまびこ101号』を切り離します。
08:55  定刻発車。駅を出てすぐ左に折れて、いよいよ新線区間に入ります。放送で早速車掌からご挨拶、高架でなく、 民家の軒先をかすめて『つばさ』は走ります。これは断じて新幹線などではありません!紅葉を分け入って、渓谷を渡り、すっかりローカル線の趣きです。
09:02  在来線の板谷駅通過。雪よけの中に駅のホームがあり、まさに軒先をかすめるように走ります。米沢の手前、萱葺きの家が登場して、 まさしく日本の田舎です。
09:26  米沢駅通過。何とここは単線であります。開業早々の事故で、 すっかり有名になった踏切はこの辺りでしょうか、もちろんそんな案内板はありません。
09:31  高畠駅通過。稲刈りを済ませて、すっかり裸にされた田圃の真中です。
09:34  赤湯駅通過。ここから山形鉄道線が左に折れています。ふと気づくと再び複線になっています、 何とも複雑な構成になっています。
09:38  東京を出て初めて上りの『つばさ』と擦れ違います。『つばさ116号』です。そしてまた単線区間…。
09:46  かみのやま温泉駅通過。
09:56  定刻、山形駅到着。開業こそしたものの、受け入れ体制ができていないようで、目下山形駅は全面改築工事中、 完成予想図は掲示されておりましたが、今のところネットが張られていたり、仮設の建物があったりで見る影もありません。 何だか慌てふためいて整備をしている雰囲気で、他人事ながら出来上がりが心配です。
 
 ※列車の編成、時刻などは現在のものとは異なります。[1992]
 

17 寝台特急あさかぜ3号

  寝台特急『あさかぜ3号』
  (JR東海道本線、山陽本線)
     寝る間も惜しむビジネス特急


 東京駅は夕方のラッシュ、旅情などというものとは無縁の味気ない雰囲気の中で、 駅弁を買うわが身はまるで異次元のことのよう…。
 平日とはいえ一見して観光ではない男性で混み合う車内におみやげの紙袋は見当たりません。東京のホテルは料金が高くてしかも予約が難しい、 それなら寝ている間に出張先まで運んでくれる寝台列車はまさにビジネスユース、最近特に人気があるのだそうです。
19:03  先発の博多行き『あさかぜ1号』発車。1号には食堂車が連結されているのですが、3号にはサロンカーのみ、そこで当然駅弁を買うかとになります。
19:20  1号を追うように入線後すぐに発車。結構混んでいて、B寝台は上段も殆どが塞がっています。朝6時過ぎに広島駅に着くなど、ビジネス特急としての性格が定着しているようです。
19:42  定刻横浜駅発車。食堂車のかわりに連結されているラウンジカーに移動して弁当を開きます。席に荷物を置いたままにする心配もあってラウンジカーを利用する人は多くありませんが、 テレビ(VTR放映)あり、売店あり、電話ありでなかなか快適スペース、夜が浅い間は利用をおすすめします。20人程度はゆっくり座って食事ができます。
 シャワー室使用中のランプが消えません。車内放送で「シャワー券、タオル、石鹸の販売を行っております…」。
20:15  ラウンジカーにて検札。車掌は広島車掌区所属でありました。
20:38  定刻熱海駅到着。この時間すでに熱海駅のホームはひと気がありません。やっと旅情に浸ることができそうです。
20:55  沼津駅通過。
21:07  富士駅通過。サロンカー内は背広もあるが、ジャージもあって、くつろぎムードですが、やはりここで浴衣姿というのはまずいと思いますがいかがでしょうか。
21:33  定刻静岡駅到着。電話がやけに繁盛しています。距離とは別に、それぞれの拠り所からは“とても遠い感じがする” 列車の中というのはそんな特別な空間なのかもしれません。
 売店の“お兄ちゃん”にお願いして少し氷を貰って寝台に戻ります。紙コップに1杯分ぐらいと思ってお願いしたのですが、彼は小声で「目立たないように」 と言ってアイスペールごと山盛りで渡してくれました、あくまでも内緒です…。
22:27  定刻浜松駅到着。
22:42  定刻2分遅れで名古屋駅到着。
22:44  遅れを調整してすぐ発車。これで本日分の停車はおしまい、次の岡山駅まで(04:15着)ノンストップです。お休みなさい。明けて・・・
06:35  定刻広島駅到着。ここで後部車輌8〜13号車を切り離します。6分停車。車内灯点灯。まだ通勤の人は少ないのですが、 それでも改札を通る人は途切れません。地方都市の夜は早いが、朝はもっと早いということでしょうか。
06:41  広島駅発車。日の出。
07:16  定刻岩国駅到着。ホームには高校生、日本全国いずこも同じ光景です。
07:42  定刻柳井駅到着。次いで光、徳山、防府駅。
08:52  何事もなく、本当に信じられないくらい何事もなく小郡駅到着。
09:25  1番線にJR山口線、小郡駅発益田駅行き普通列車(ディーゼルカー)入線、乗り込みます。新幹線の駅を併設する主要駅にしてはすっかり鄙びていて、 山口線の乗換駅ででもなければ新幹線は間違いなく素通りでしょう。山口までの停車駅は、周防下郷、上郷、仁保津、大歳(おおとし)、矢原(やばら)、 湯田温泉、山口の各駅。山口市は全国の県庁所在地の中で最も人口の少ないところ(約12万人)、よく言えば西の小京都として実に静かで居心地もよさそうですが、 要するに田舎町なのです。
 
 ※列車の編成、時刻などは現在のものとは異なります。[1992]
 

18 特急あさま11号

  特急『あさま11号』
  (JR信越本線)
     牛に曳かれて善光寺参り


 上野駅16番線、新幹線の東京駅乗り入れに伴い、再び土産の詰まった紙袋が似合う“ふるさと” につながる駅に戻ってしまいました。発車のベルが妙に切なく響きます。
10:00  定刻発車。
 軽井沢を経由して長野駅まで2時間50分、小旅行としてはまことにふさわしい時間と距離ということなのでしょう、グループの乗客が多い、発車早々席を対座にさせていきなり酒盛りを始めます。 このあたりの光景は“さすが”でありますが、から揚げやかわき物が飛び交って、おばさんたちの黄土色の歓声が支配する空間は、まだまだヤングが幅を効かせる時季ではありません。
10:21  大宮駅到着。
10:22  同、定刻発車。
 ドヤドヤと乗客が続き、4号車指定席は満席となりました。車掌に「自由席は何処?」と尋ねる人がありましたが、ここからだと随分と遠い、先は長い、 もう少しゆとりを持って駅においでください。
11:09  定刻、高崎駅発車。
 特急で1時間10分、通勤圏もこの辺りまでか、いやいや、最近は新幹線通勤というものもあります。それにしても、東京っていったい何でしょうか…。
 横川駅で、後部に登坂用の機関車を連結するために、4分停車するといいますが、これはむしろ『峠の釜めし』を買うための時間です。車内放送でも、 しっかりと「お買物の際は、発車のベルにご注意を…」とありました。
11:29  横川駅到着
 皆な走る、走る、釜めし買いに…。諦めてスゴスゴとホームを戻る人もあって、これはなかなかのショータイムです。 衝撃があって機関車連結完了。
11:33  無情にも定刻発車。車内もやっと静かになりました。隣の席の青年も戻ってきました。
 彼は見事に釜めしを手にしておりました。
 スピードが落ちます。駆け上るというよりは、よじ登る感じ、走りに無理があります。ひたすら山の中・・・
11:50  軽井沢駅到着。
 相当数が下車しました。ここで登坂用の後部機関車切離し、…というわけで3分停車。
11:53  定刻発車。
11:57  定刻、中軽井沢駅発車。この、とってつけたような駅は一体…、存在の意味がよくわかりません。
12:12  定刻、小諸駅発車。
 ここから左に折れると小海線、小淵沢方面ということになります。
12:24  定刻、上田駅発車。
12:34  定刻、戸倉駅発車。
 これは正真正銘鄙びた温泉町といった趣です。
12:42  定刻、篠ノ井駅到着。
12:50  定刻、長野駅到着。
 昭和10年の竣工と言われます長野駅の駅舎は、奈良駅と並ぶ仏閣建築でありますが、 もちろんモチーフは『善光寺』、駅舎としてはこちらの方がはるかに古い、旅人の身勝手をお許し願えるならば、ずっとこのままでいてほしい、 そんな“かたち”の駅です(結局そうはならず、その後味気ない姿に?建て替えられました)。
 
 ※列車の編成、時刻などは現在のものとは異なります。[1992]
 

19 あさひ324号

  新幹線『あさひ324号』
  (JR上越新幹線)
     無理にでも旅情に浸る…


 おばさんでいっぱいの『いなほ10号』から、やっとの思いで解放されましたが、『あさひ324号』 の発車時刻が迫っています。出口から近い階段が工事中でやむなく地下道へ、エスカレーターの動きももどかしく、改札から新潟駅14番ホームに駆け上がります。 上ったところが予約の9号車であったことがせめてのも救いです。席に着くとすぐに発車。“乗り継ぎ時間に余裕のない行程を組むのはよしましょう!”
16:51  『あさひ324号』無慈悲にも定刻発車。
 味も素っ気もない新幹線で、いかに旅情に浸り得るか…。私の席は予約のない家族に占領されておりましたが、ここは断固として子供を追い払います。「ごめんね (ここはおじさんの席です)」、急に決まった“移動”で予約の手配ができなかったのかもしれませんが、そんなことで安易に譲ってはいけません、恨むならご両親を恨みなさい…。
17:04  燕三条駅停車。弥彦線なんていうローカル線にも一度トライしてみたいものです。
17:05  定刻発車。
17:15  定刻、長岡駅到着。秋の日はつるべおとし…、ということですっかり暗くなってしまいました。
17:16  発車。指定席はほぼ塞がってしまいました。
 日本中どこへ行っても、この座席指定については、やや配慮に欠けるところがあるように思います。これは、人の動きがどうしても同一時期、同一方面に集中する傾向がある日本独特のことのようでもあるのですが、 例えば、欧州の鉄道などは、過密に乗客を詰め込まないという基本的な考えがあって、必要とあらばいつでも臨時列車を走らせる用意がある、それでこそ臨時列車という訳です。 英国では一人たりとも乗客を立たせて列車を走らせない、いかにも効率とは無関係の英国式信念のようなものを感じた憶えがあります。
 次の高崎までノンストップ、闇の中をただ冷たく走っているだけです。誠に味気ない。隣りの年配のグループが先程からうるさいほどに話している内容がやっと判りました。 この車輌の前方半分がビュッフェになっていて、ドアが開く度に依然満員であることを残念がっていたのです。もう諦めたほうが宜しいですよ、東京はもう目前ですから。 詰まらない、何の感傷もない実に詰まらない移動です。眠くなればこれ幸いと寝込んでしまうところですが、こんな時かえって眼が冴えてしまう…。
18:10  高崎駅、定刻到着。もう首都圏と言ってしまっていいのでしょう。遂にお隣りさんはビュッフェを諦め、この場で始めてしまいました。 するめいかを始めとして数々の“乾き物”が登場します。最近の年寄りたちはとにかく元気、しかしその代わりに少々落着きがないのではないか、先の特急『たざわ5号』 の女子高校生たちと相通じるところがあると、ややお疲れ気味の旅人は感じます(元気なのはいいのですよ)。
18:11  この『あさひ324号』の終着駅は東京なのですが、何故上越新幹線までが東京駅を目指すのでしょうか。東北・上越方面へは上野駅、 東海道は東京駅、甲斐路は新宿駅と、それぞれが別々にターミナルとしての機能を果たしても良いのではと思うのですが、これもまた日本だけの特色です。 ロンドンにはリバプール・ストリート駅、パディントン駅、キングスクロス駅、ヴィクトリア駅、パリには北駅、南駅、リヨン駅と行き先によってターミナルが違っています。 因みにそれぞれロンドン駅、パリ駅などという駅はありません(パリ・リヨン駅などとなります)。何でもかでも東京駅と繋げてしまえばという考えはどうかと思います。
18:40  大宮駅到着。
18:42  どうしたことか、定刻2分遅れて発車。
19:02  何事もなく、定刻上野駅到着。暗く哀しい、可哀想な駅になってしまいました。大いなる無駄がここにもあります。
19:03  定刻発車。
19:08  そして、終着東京駅。
 
 ※列車の編成、時刻などは現在のものとは異なります。[1992]